本業の俳優に加えて、コメディエンヌ、エッセイストなど、多彩な才能を開花させて独自の道を切り開いてきた室井滋さんが、エッセイ本『女の悩みはいつもマトリョーシカ』(青春出版社刊)を上梓した。結婚や仕事、体の変調など悩みを抱えた30代以上の女性たちに、生き方を指南する内容だ。
当初、このテーマでの執筆依頼を受けたとき、室井さんは「私はちゃんと結婚もしてないし、子供も産んでないから、女性たちに意見するのは無理ですよ?」と断ったのだという。それでもアプローチが続き、「私の破れ傘のような人生でもよければ(笑い)」と引き受けたのだとか。“破れ傘のような人生”とはどのようなものだったのか。
20代は、バイトに明け暮れた10年だったという。7年半いて中退した大学時代は「自主映画の女王」と呼ばれ、阪本順治監督や長崎俊一監督など、いまや大御所と呼ばれる若き精鋭監督たちのヒロインとして数々の作品に出演。
「自主映画は手弁当ですが、ヒロインですから気持ちよく演技ができるんです。でもたまにテレビの仕事があって行ってみると、台本のト書きに“びっくりするようなブスが立っている”とか書かれていて、3枚目の役ばかり。これでいいのか、本当に女優になれるのかと悩んでいました」
女優の仕事が安定しないから、100以上もの短期アルバイトをした。パチンコ店のサクラ、夜店の飲料売り。英会話教材のセールス等々。「30才になる前にアルバイトをやめて、落ち着きたい」と思っていたら、たまたま書いたエッセイが面白いと評判になった。
請われるままに書くと次々に本がヒット。同時に女優としても映画やドラマに引っ張りだこになり、30代は公私共に猛ダッシュの時期になった。
「睡眠は、仮眠程度しかとっていなかったです。徹夜で麻雀を打って、雀荘から仕事に行ったことも。釣りが好きだったので小型船舶の免許を取ったときには、船も買って、そこに住んでいたこともありましたし(笑い)」
※女性セブン2012年1月19・26日号