2011年3月11日に起きた東日本大震災を経て、日本人の心象風景は大きく変わった。
震災後には、会話のなかった家族にふれあいが戻り、顔も知らなかった隣人同士が助け合うようになった。高視聴率を記録したドラマ『家政婦のミタ』(日本テレビ系)や『マルモのおきて』(フジテレビ系)も、家族の絆がテーマ。これまで希薄になっていた、家族、友人、地域などの人間関係も劇的に変化している。
よく知られているのは、震災で結婚が増えたこと。
例えば、結婚相談所大手の「オーネット」では、成婚退会者が3月、4月に前年同月比20%増。5~7月は一旦落ち着いたが、8月以降は再び前年比20%増の状態が続いている。
消費心理に詳しい駒沢女子大学人文学部教授の富田隆さんが解説する。
「不安な状況で恐怖が高まると、誰かと一緒にいたいという親和欲求が生まれます。未婚の人が、夫や妻が欲しい、家族が欲しいからと結婚するのは、当然の流れでしょう」
人とのふれあいを求める傾向は、特に女性に顕著だ。電通総研の調査「震災をきっかけにした人間関係の変化」によれば、「震災をきっかけにこれまで以上に大切にしようと思った人間関係があるか」という問いに、80%の女性が「ある」と回答。男性の68%を大きく上回った。
『震災婚』(ディスカヴァー携書)の著書があるジャーナリストの白河桃子さんは、震災をきっかけに結婚した女性たちに取材を重ねてきた。
元カレと復縁した女性、震災前日に仕事で出会った男性を食事に誘い、結婚までこぎつけた女性、震災時に落ち着いて対応する彼を見直して結婚を決めた女性…。
その結果、震災婚には3つのタイプがあることがわかったという。「吊り橋効果結婚」「絆を形にする震災入籍」「長すぎた春に決着婚」だ。
「『吊り橋婚』は、吊り橋の上にいるときのような不安な心理状態の時期に出会ったカップルが恋に落ちやすいことから、震災後に出会って結婚したケースを指します。残りのふたつはもともとつきあっていたカップルが結婚するケース。
『絆を形に婚』は、吉川晃司さん(46)や夏木マリさん(59)のように、事実婚で満足していたふたりが“やっぱり絆は形にしたい”と入籍するパターン。『長すぎた春婚』は、結婚という責任を負うことを先延ばししてきたカップルが結婚するケースです」(前出・白河さん)
その一方で、離婚する夫婦も増えているという。
女性の場合、生命の危機を感じるほどの体験を経て、「一生、我慢しながら夫と暮らすの?」「夫は家族が危険なときに全く役に立たない」などと感じるケースが多いようだ。
とりわけ余裕のない生活状況が続く被災地では、夫婦ともにむきだしの感情がぶつかりあうことも。宮城県仙台市にある宮城離婚相談所への離婚相談は前年比2倍になった。
※女性セブン2012年1月19・26日号