昨年7月27日、ロサンゼルスの自宅で首を吊って自殺した伊良部秀輝氏の亡骸は現地で火葬され、「本人の希望で、ロスのリトル・トーキョーにある東本願寺別院に納骨されることになっていたはず」(在米のスポーツジャーナリスト)といわれていた。
ところが、死後半年経った今、伊良部氏の遺骨は日本で「無縁仏」になっているというのだ。米国在住で伊良部氏を「ラブちゃん」と呼ぶ間柄だった知人のA氏が重い口を開いた。
「私もそれを聞いて驚いて、9月に納骨されたというお寺へ行ったんです。すると、寺から“伊良部さんの遺骨は無縁仏として預かっているので、7年後には他の人のお骨と混ぜられてしまう”といわれました」
つまり、このままでは「伊良部秀輝」の遺骨が他の遺骨と合祀されて誰のものだかわからなくなってしまうのだ。
本誌は確認のため、A氏の示した千葉市内にある寺を訪れた。住職夫人に案内されたのは、本堂横に建つ「無量寿堂」と記された無縁仏を祀る墓だった。伊良部氏をはじめ納骨された人の名前は見あたらない。
無縁仏とは、弔う身寄り(親族や縁者など)がいない死者・墓のこと。同寺は、近年の少子化や独居高齢者の増加などで墓の継承・管理に不安を持つ者の遺骨を預り、永代供養を行なっている。しかし、伊良部氏には京淑(きょんす)夫人という家族がいるはずだが……。
納骨された経緯を聞くと、驚くことに住職夫人はこう説明するのだ。
「伊良部さんの奥様と、そのお母様が遺骨をもってお見えになり、無量寿堂に納めていかれました。あとのことはご遺族にお尋ねください」
一体どうしてこのようなことになったのか。背景には複雑な人間関係が横たわっていた。 本誌は伊良部氏の実姉に話を聞くことができた。彼女は伊良部氏が無縁仏になっているのを認めた上で、経緯を語り始めた。自殺の直後、ロス郊外で行なわれた葬儀ではこんな一幕があったという。
「遺体の検視を終え、京淑さんと2人の子供の立ち会いのもと、弟は荼毘に付されました。私は弟の顔をひと目見たいと思い、妹と日本から駆けつけたのですが、受け付けをする方から“奥さんがすべてを取り仕切っているので”と、入場を拒まれてしまったのです。諦めきれず、妹と2人で交渉したのですが、結局、弟の顔は見せてもらえませんでした」
失意のまま帰国した実姉らを待っていたのは、さらにショッキングな展開だった。葬儀から1か月も経たないうちに京淑夫人とその母親が伊良部氏の実家に姿を現わしたのだという。
「お義母さんが一緒に来られて、ウチの両親に対し、一方的に“ここ(寺の名前)に(骨を)入れました”と告げられました。四十九日も終えていない状況で、何が何だかわからず、こちらとしては到底納得できませんでした」
※週刊ポスト2012年1月27日号