2009年に東京、埼玉、千葉で起きた連続不審死事件で、殺人罪などで起訴された“婚活詐欺女”こと木嶋佳苗被告(37)は、あくまで無罪を主張。2年以上に及んだ拘置所生活を“完黙”で通した被告に対して、検察は状況証拠のみで闘うことを強いられている。あまりに謎が多すぎるこの事件、いやこの女を、ジャーナリストの安田浩一氏がリポートする。
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北海道別海高校の卒業アルバムに、木嶋佳苗は素朴で無邪気な夢を記している。
〈私は、温かい家庭を築くのが夢です。専業主婦になって、だんな様に尽くす素敵な奥さんになるんだもん。〉
この頃から、すでに結婚へのこだわりを見せていた。その屈託ない願望を裏付けるように、アルバムのアンケートコーナーでは、「早く結婚しそうな人」なる項目でクラス2位を獲得している。
「大人びた雰囲気がありましたし、仕草も上品でした。けっして美人ではありませんでしたが、色っぽい感じがなかったわけではない」
同級生の一人はそう述懐した。木嶋は同級生から「キジカナ」と呼ばれていた。先の同級生が続ける。
「僕はキジカナとはボランティアサークルで一緒でした。老人ホームや障害者施設でボランティア活動をしていたのですが、キジカナはお年寄りにはとても優しく接していましたよ。お年寄りの手を引きながら介助しているキジカナの姿をいまでも思い出します」
結婚願望や年寄りへの優しさを、その後の事件に結びつけるつもりはない。この同級生に限らず、他の多くの同級生も「優しいキジカナ」の記憶を抱えていた。だがそれは、必ずしも木嶋への好感度を表したものではなかった。
「なんていうか、少しばかり浮いた存在だったのも事実なんです」(別の同級生)
先のアンケート調査には続きがある。「不倫しそうな人」では2位、そして「アダルトビデオに出そうな人」「子だくさんになりそうな人」では、木嶋は実に1位を獲得しているのだ。
※週刊ポスト2012年1月27日号