共和党きっての知日派であるリチャード・アーミテージ元国務副長官(66)は、日米双方で積極的に発言するなど、今なお米国の外交政策に影響力を持つ。同氏はこれからの日米同盟がどんな意味を持つと考えているのだろうか。アーミテージ氏に聞いた。
――中国の台頭を受けて、日米同盟の重要性は変わる?
アーミテージ:中国の台頭は21世紀前半のアジア、そして世界にとっての最も重要な問題である。そしてそれが日米関係にとてつもないインパクトを持つことは火を見るより明らかだ。すでにその徴候は、尖閣諸島での中国漁船衝突事件(10年9月)や中国空軍戦闘機による海自の情報収集機に対する威嚇行動(11年8月)などに如実に表われている。
中国の台頭を受けたアジアの戦略環境下において、日米同盟の重要性が高まることはあっても、低くなることなど想像できない。日米同盟はアジア全体の安全保障にとって、これからますます重要になる。
日本に基地があり、米軍が即応態勢を維持していること、そしてこの基地に駐留している米軍が、日本の防衛のためだけでなく、アジア諸国との軍事協力を進めて地域全体の安全と安定に寄与していることを忘れてはいけない。
鳩山政権時代に日米関係が最悪の状態になったことが示すように、それらに対する理解が、日本では不足していると思う。
当時、北朝鮮と中国を除く全てのアジア諸国が日本を次々に訪問して、外務省に対し「米国との関係を改善して欲しい」と懇願していた。これは、安定した日米同盟が、アジア全体の安全保障に不可欠であることの証左と言えるだろう。
在日米軍の駐留に反対している中国と北朝鮮を除けば、全てのアジア諸国が、地域全体の安定に日米同盟が寄与していることを理解し、日本に感謝している。残念ながら、日米同盟がアジアで果たしている役割を理解できていなかったのは鳩山総理だけだった。次の菅総理は、少しは理解していたようだが……。
※SAPIO2012年1月11・18日号