前原誠司・民主党政調会長は、外相時代にロシアのラヴロフ外相と幾度となく会談している。度重なる会談で何が起きていたのか。元外務省の主任分析官・佐藤優氏が切り込む。
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――ロシアというタフな国との外交交渉では、どういったことを念頭に置くのでしょう。
前原:これは佐藤さんのご専門分野でしょうが、私が考えるところでは、ロシアという国はこちらが過剰に反応すると、それ以上の反応をしてくる。外国に対して押し込まれたり、言い負かされたりするのを極端に嫌うため、「押す」「引く」という感覚が極めて大事なのだと思います。
佐藤:メドベージェフ大統領が北方領土に上陸した際、前原さんは河野雅治駐ロシア日本大使をいったん日本に戻しました。大使を本国に呼び戻す行為を外交的には「召還」と言いますが、あえて前原さんはただ、「呼び戻す」とした。外交の世界で「召還」と言ったら、これはもう戦争の寸前です。それに近いような手を、ガツンと打ったわけです。
前原さんの口からは言いにくいと思いますが、ロシア側はこの時、カードを切っています。「河野大使の帰任が何日までじゃないと、こちらもベールイ大使を戻すぞ」という話が、私のところにも聞こえてきました。当然、外交ルートでも聞こえてきたと思います。それをきちんと踏まえて、今度は、「はい、出張が終わったので帰りましょう」というかたちで大使を戻した。ロシア側はこう考えます。タイミングを考えて戻す前原大臣は、駆け引きがわかっている。つまり「面白い」と。
※2012年1月18日号