295万人を動員した1965年のツタンカーメン展、1996年に発売され、全世界で600万部の大ベストセラーになった『神々の指紋』。そして今年2月にはピラミッドにまつわる常識の数々を最新科学で覆す映画『ピラミッド5000年の嘘』が公開され、ピラミッドに関する数々の謎が解き明かされる。
ピラミッドに関する誤った常識の1つが「ピラミッドの石はすべて同じ形」というもの。しかし実際は、サイズや形が違う石を接合していたのだ。
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4600年前、大ピラミッドの建造当時にあった道具は、銅のノミや石鎚、麻のロープぐらいで、鉄製の道具はまだ登場していなかったといわれている。もちろん、測量のための測定器具もない。その程度の器具しかないにもかかわらず、あの巨大建造物は、すべて形がバラバラの石を接合し積み重ねて造られていたのだ。
ギザの大ピラミッド内部には、「王の間」と「王妃の間」「地下の間」という3つの部屋がある。これら3部屋は、ピラミッドの巨大さと比較すれば、極めて小さな部屋であり、もっとも大きい「王の間」でも、南北5.2m、東西10.5m、高さ5.8mしかない。
この小部屋から、当時の驚くべき精度が判明する。小部屋は、完全な直方体を形成し、幅や高さのズレはたった0.5mm。この精度の高さは現代の建築水準に匹敵するという。
正確な同じサイズの直方体の石を積み上げて、正確なサイズの部屋を作ったというのなら理解できる。しかし、小部屋の壁や床は、バラバラのサイズの石が精密に加工され、面と面をピッタリと合致させて構成されている。複雑な角度の断面でカットされた石と石が噛み合わされている部分は、カミソリの刃が入らないほど密着しているのである。
現代の建築者たちに口を揃えて「こんなことは不可能」といわしめる技術を古代エジプト人はどうやって得ていたのか。さもなければ“外部”からその技術はもたらされたのだろうか。
※週刊ポスト2012年1月27日号