市川海老蔵事件などで名前の挙がった「関東連合」をはじめとした「半グレ集団」だが、彼らは10月に全国で施行された暴力団排除条例の対象にはならない。彼らと暴力団の付き合いはどうなっているのか。ベストセラー『暴力団』(新潮新書)の著者であるノンフィクション作家の溝口敦氏が解説する。
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東京・六本木の関東連合OBを典型とするような「半グレ集団」が台頭し、今後暴力団の領域を侵食するだろうと見られている。彼らは暴走族のころからの先輩-後輩関係を維持して、振り込め詐欺や貧困ビジネス、ヤミ金、出会い系サイトなどを経営、あるいはそれらに従事し、少なくない収益を上げている。
半グレ集団の多くは過去一度として暴力団に籍を置いたことがないから、警察に彼らの犯歴データはない。警視庁でも半グレ集団をどのセクションが担当するかはようやく11年春に決めたぐらいで、今なお基礎データを集めている段階である。
当然、彼らは「暴力団でない」ことから、暴力団対策法や暴力団排除条例の対象にならず、それらは半グレ集団には適用されない。
半グレ集団にいわせれば、もはや暴力団に入るメリットはなく、親分や兄貴分の命令を絶対として従う気もない。同じ悪事を犯しても、警察は暴力団を目の仇にするし、法廷でも暴力団の刑は加重される。暴力団を辞めたくなっても、あっさり辞めさせてくれる組織ではなく、だいたい組事務所に月会費を納めなければならない。
半グレ集団にとって暴力団はデメリットばかりの旧型組織なのだ。暴力団メンバーは年長者が多く、従ってITやネット、携帯電話やスマホを使った新シノギを創出する能力を持たない。半グレ集団の成員は生まれ落ちたときから電子機器や電子ゲームに囲まれて育った。だからこそネットを使った出会い系サイトやネットカジノへの客の誘導、ペニーオークションの立ち上げなど、新シノギを創設・運営できる。
暴力団の一部は半グレ集団をまね、入ってきた若者を最初から組に入れず、関係企業の社員や系列右翼団体の隊員にして「企業舎弟」的に温存するなどの措置も執り始めたが、長期低落傾向は変わるまい。
※SAPIO2012年1月18日号