日本のスパコンが性能世界一となり、iPS細胞の研究では世界的成果が発表されるなど、2011年は、事業仕分けの逆境をはね退けるかのように、「理系」が元気な年だった。しかし、その一方で子供たちの理科離れが危惧されている。国家の基礎たる教育の復興はいかになされるべきか。
実験施設「カミオカンデ」でニュートリノ天文学という新分野を開拓し、2002年にノーベル物理学賞を受賞した小柴昌俊博士が、自らの経験をもとに提言する。
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まず学校の先生が子供たちに及ぼす影響は、とても大きいということを申し上げたい。たとえば、理科嫌い、数学嫌いの子供がどうして出てくると思いますか?
日本の小学校では、基本的に一人の先生が一つのクラスを担当していて、何でもかんでも、その先生が教えています。子供からみると、理科が好きだとも、面白いとも思っていない先生が教えたって、子供は理科を好きになるはずはありません。逆に教える人が理科を好きで、「これは面白い」と感じながら教えれば、子供は自然と理科好きになるものです。
ところが今の小学校の制度では、理科の不得意な先生も理科を教えなくてはいけない。これは子供にとっても先生にとっても不幸なことです。そこで僕の提案です。学校の先生を全部ひとまとめにして、理科向きの先生と文科向きの先生とに分け、それぞれの先生を二人一組にして、ペアで二つのクラスを担当させてはどうでしょうか。
こうすれば理科が好きな先生が両方のクラスを、理科が不得意な先生は自分が得意な文科を両方で教えることができます。
こうした話を前に文科大臣にしたら、「それはいいですねぇ」と言ったんだけど、その大臣がすぐにクビになったんで、実現していないのですがね(苦笑)。
※SAPIO2012年1月11・18日号