中国の原発発電容量が、2015年までに世界3番目の規模になる。反原発に揺れる先進諸国を尻目に中国が着々と「原発大国」への道をまっしぐらに進んでいる理由は何なのか。ジャーナリストの富坂聰氏が解説する。
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日本では猫も杓子も“脱原発”の大合唱をしているが、お隣「中国」の様子はもう少しシビアだ。
昨年末、中国の『上海証券報』は、中国核工業集団公司の孫勤総経理にインタビューして、その内容を掲載しているが、それによれば中国国内の原子力発電設備の発電容量が〈2015年までに世界の国・地域のなかで上位三番目の規模になるとの見通しを示した〉というのである。
これは中国の「原発発展計画」の中で謳われた2020年までに国内原発の発電容量を4000万KWにするという目標が、〈五年前倒しで達成される〉との予測に基づいた発言だという。
反原発に揺れる先進諸国を尻目に中国が着々と「原発大国」への道をまっしぐらに進んでいるといったところだろうか。
だが、これはかつての日本が進めたような消費電力の原発依存度を高めてゆこうといった単純なシフトではない。むしろ全体のパイが急膨張するなかで、原発もまたその一つの手段に過ぎないというものだ。
というのも、中国はすでに風力発電では発電量は世界一、太陽光発電も同じというように、使える発電方法はすべてフル活用している状況なのだ。このことは昨年、震災に見舞われたわけでもないのに中国が日本以上に深刻な電力不足であったことからも明らかだ。
ただ同じ電力不足でも、中国には西側先進国のような“民主主義のコスト”がない分、問題解決の道は見えているのでは? そう思ったのならそれは誤解だ。
これも昨年末、中国広東省で大規模なデモが起きて住民と警官隊が衝突する事件が起きたのだが、この衝突の原因は他でもない発電所建設に対する住民運動だった。しかも、それは石炭による火力発電なのだ。やっぱり中国でも、原発計画がそのまま進むとは思えなくなってきているようだ。