就活で必ず囁かれるのが取引関係や親の力を利用した「コネ入社」。作家で人材コンサルタントの常見陽平氏が、その実態について語る。
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学歴差別、男女差別、内定辞退時の拘束などに並び、就活生の間で毎年話題になるのは、コネ入社です。毎年、「私がこんなに苦労しているのに、コネ入社なんて、あり得ない!」など、炎上を誘発します。
そういえば、ある大学で行われOB・OG交流会に参加した大手広告代理店勤務の女性は、学生から何度も「コネ入社ってあるんですか?」と聞かれ、苦笑したとか。90年代前半、就職氷河期と言われ始めた当時の雑誌に、旅行代理店の企業説明会の様子が載っていたのですが、その時のエピソードが面白い。
「募集人数は20名なのですが、紹介などで半分は決まっているので実質10人です」と人事が説明しているわけですよ。それってコネじゃないですか。でも、学生たちはただため息をつくだけだったとか。今なら大炎上必至ですよね。
さて、このコネ入社ですが、結論から言うと、ありますよ。会社によりますけど。今回は、コネ入社があるという前提で、それがいかに多様であるかについて、コネ入社経験の求職者、対応した人事担当者、同僚にコネ入社がいる社員の証言を元にお届けしたいと思います。
いつもコネ入社は存在するか否かばかりが話題になるのですけど、コネにも様々なレベルがあるようです。ある有名企業の人事担当者はこう言います。「取引先のキーマンの子供など、“人質”にするために必ず採用しなければならない人から、企業説明会の予約を取りやすくする、書類選考だけは通す、ある段階までの面接まで通して判断は面接官に委ねるなど、コネにもレベル差があります」なるほど、「コネ入社にもレベルがある」とは目からウロコですね。
さらに、こんな証言も。「実は、コネ入社だということを就活生自身が知らないこともあるのですよ。親が頼んできて、子供には内緒にしてほしい、と。ただ、本人も選考途中で周りとのレベル差から薄々気づくようですが」
もちろん、コネ入社を絶対に許さない企業があります。そんな企業には、コネ入社ブロック要員がいることも。ある大手企業で人事部長を務めていた方が教えてくれました。「営業部長などが取引先から頼まれて、コネ入社の依頼がきたが、全力で潰していた。部下にコネ入社ブロック要員がいて、取り敢えず会って面談して、ウチがいかに厳しいかを伝えて、辞退してもらっていた」まさにコネ入社対策のヒットマン・・・。就活界にもゴルゴ13、デューク東郷みたいな人がいるわけですな。
コネ入社ではないですが、総合商社、地方銀行などでは「社員の家族は原則採用しない」という方針の企業は存在します。私も何度、学生から「○○に入りたいのですけど、親が行っているので無理なんですよ」という相談を受けたことか。
では、コネ入社社員は入社後、どうなんでしょう。同僚にコネ入社がいる若手社員に聞いてみました。「人事部は、事業部長や一部の人にしかコネ入社であることを明かしません。ただ、名前でバレますね。明らかに取引先や著名人の苗字と一緒、とか」さらに、こう続けました。「でも、コネ入社の社員は、ある意味サラブレッドなわけで、さすがと思うこともありますよ」なるほど、コネ入社と言うといかにもバカそうなボンボンが入ってくるという印象でしたが、そういう評価もされるわけですね。
コネ入社には覚悟も必要です。大学の同期で何人かコネ入社した友人がいたのですが、「教授のコネなので絶対に断れない。普通に何社か受けないか悩んでいる」と相談を受けたことがありました。人の紹介である分、入社後の仕事にも覚悟、責任を意識してしまうことも。
まぁ、コネ入社は「それっていいのか?」「オレは頑張っているのに、奴ら楽勝で入りやがって。きー」となるわけなのですが、水面下で行われているので、抗議すらできません。採る側も入る側も責任が生じますし。互いの信頼で採用できるという意味では効率がよいとも言えます。ババを引かされることもあるわけですが。いちいち怒ってもしょうがないのが現実ですかね。