国内

格安航空会社参入のANAとJAL 国内のコスト高で成功難しいか

今年は日本の国内線に格安航空会社(LCC)が複数参入する。だが、既存の航空会社(レガシーキャリア)が、LCCを設立して生き残りに成功するのは難しいのではないか、と大前研一氏は指摘する。なぜなら、高コスト体質を、どうしても引きずってしまうからだ。以下は、大前氏の解説である。

* * *
まず3 月にANA(全日本空輸)系のピーチ・アビエーションが関西国際空港を拠点として就航し、続いてANAが出資するエアアジア・ジャパンが成田空港を拠点に8 月から国内線、10月から国際線に参入、さらにJAL(日本航空)が出資するジェットスター・ジャパンが年内に成田と関空から国内線参入を予定している。

ただし、日本のLCCは海外のLCCに太刀打ちできないだろう。日本は燃料費と空港の着陸料や搭乗ゲートなどの使用料が高いからである。

マレーシアのエアアジアの場合、国の産業政策によってマレーシア国内で給油する時の燃料費が日本の2分の1ぐらいと安い。それもあって、エアアジアの「1座席を1キロ運ぶ費用(ユニットコスト)」は、ANAの4分の1以下である。

日本も航空産業を守ろうと思うなら、産業政策でトラックが使う軽油をガソリンより大幅に安くしているように、ジェット燃料の値段を大幅に安くすべきだろう。

また、オーストラリアのジェットスターが安い理由のかなりの部分は、オーストラリアの空港は多くが民営化されていて、着陸料や搭乗ゲートの使用料がタダかタダ同然であることだ。空港は機体整備、免税店や売店、レストラン、ビジネスクラスの有料ラウンジなどで稼いでいるのだ。

地方空港のターミナルビルはプレハブの簡素な建物で、高価なボーディングブリッジがなく、乗客はタラップで乗り降りするので雨には濡れてしまうが、航空機がターミナルビルの目の前まで来るから、歩く距離は短く不便はない。

一方、日本の空港は国策で海を埋め立てて滑走路を造り、立派なターミナルビルを建てているから、その建設費の分だけ着陸料も搭乗ゲートやカウンターの使用料も高くなる。たとえば、関空は建設費が2兆8000億円に達し、巨額の有利子負債を着陸料や搭乗ゲートなどの使用料に転嫁しているのだ。

つまり、日本の航空会社が高コストになっているもう一つの原因は、政府が空港を、公共工事を行なうための“ハコもの行政”として無節操に造ってきたことのシワ寄せなのである。したがって航空行政がこのままでは、LCCのコストもさほど安くはならないのだ。

※週刊ポスト2012年1月27日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

渡邊渚さんの最新インタビュー
元フジテレビアナ・渡邊渚さん最新インタビュー 激動の日々を乗り越えて「少し落ち着いてきました」、連載エッセイも再開予定で「女性ファンが増えたことが嬉しい」
週刊ポスト
お笑いコンビ「ダウンタウン」の松本人志(61)と浜田雅功(61)
ダウンタウン・浜田雅功「復活の舞台」で松本人志が「サプライズ登場」する可能性 「30年前の紅白歌合戦が思い出される」との声も
週刊ポスト
4月24日発売の『週刊文春』で、“二股交際疑惑”を報じられた女優・永野芽郁
【ギリギリセーフの可能性も】不倫報道・永野芽郁と田中圭のCMクライアント企業は横並びで「様子見」…NTTコミュニケーションズほか寄せられた「見解」
NEWSポストセブン
主張が食い違う折田楓社長と斎藤元彦知事(時事通信フォト)
【斎藤元彦知事の「公選法違反」疑惑】「merchu」折田楓社長がガサ入れ後もひっそり続けていた“仕事” 広島市の担当者「『仕事できるのかな』と気になっていましたが」
NEWSポストセブン
「みどりの式典」に出席された天皇皇后両陛下(2025年4月25日、撮影/JMPA)
《「みどりの式典」ご出席》皇后雅子さま、緑と白のバイカラーコーデ 1年前にもお召しのサステナファッション
ミニから美脚が飛び出す深田恭子
《半同棲ライフの実態》深田恭子の新恋人“茶髪にピアスのテレビマン”が匂わせから一転、SNSを削除した理由「彼なりに覚悟を示した」
NEWSポストセブン
保育士の行仕由佳さん(35)とプロボクサーだった佐藤蓮真容疑者(21)の関係とはいったい──(本人SNSより)
《宮城・保育士死体遺棄》「亡くなった女性とは“親しい仲”だと聞いていました」行仕由佳さんとプロボクサー・佐藤蓮真容疑者(21)の“意外な関係性”
NEWSポストセブン
過去のセクハラが報じられた石橋貴明
とんねるず・石橋貴明 恒例の人気特番が消滅危機のなか「がん闘病」を支える女性
週刊ポスト
女優の広末涼子容疑者が傷害容疑で現行犯逮捕された(写真は2019年)
《広末涼子逮捕のウラで…》元夫キャンドル氏が指摘した“プレッシャーで心が豹変” ファンクラブ会員の伸びは鈍化、“バトン”受け継いだ鳥羽氏は沈黙貫く
NEWSポストセブン
大谷翔平(左)異次元の活躍を支える妻・真美子さん(時事通信フォト)
《第一子出産直前にはゆったり服で》大谷翔平の妻・真美子さんの“最強妻”伝説 料理はプロ級で優しくて誠実な“愛されキャラ”
週刊ポスト
「すき家」のCMキャラクターを長年務める石原さとみ(右/時事通信フォト)
「すき家」ネズミ混入騒動前に石原さとみ出演CMに“異変” 広報担当が明かした“削除の理由”とは 新作CM「ナポリタン牛丼」で“復活”も
NEWSポストセブン
万博で活躍する藤原紀香(時事通信フォト)
《藤原紀香、着物姿で万博お出迎え》「シーンに合わせて着こなし変える」和装のこだわり、愛之助と迎えた晴れ舞台
NEWSポストセブン