野田佳彦・首相が年頭会見で消費税増税を「ネバー・ネバー・ネバー・ネバー・ギブアップ」と語るなど、露骨な増税路線が打ち出されている。財務省による大新聞、テレビを巻き込んだ世論工作も活発化している。
財務省は毎年、年末に予算の政府原案がまとまると各紙の論説委員と経済部長を集めて「論説委員経済部長懇談会」(論説懇)を開く。5センチもある分厚い資料が配られ、財務省の会議室で論説委員たちに予算の内容を刷り込むのだ。
財務省側は「自由なご意見を」というが、そもそも彼らの多くはそれを読み解く能力も、インチキを見破る気概もなく、役人の解説のままに社説を書くのが通例だ。昨年は12月23日夜に開かれた。
東京新聞論説副主幹の長谷川幸洋氏は、突然、その論説懇から排除された。財務省広報室は長谷川氏の事前の問い合わせに「開催日が決まれば連絡します」と約束していたが、すっぽかされたのである。長谷川氏は新聞記者では数少ない政府税制調査会委員を務めた税制の専門家で、今回の消費増税に批判的な記事を書いてきた人物である。
「私が呼ばれなかったのは増税に反対だからか」
長谷川氏が抗議すると、広報室長は「事務的ミス」と言い張った。
消費増税をひかえた今回の論説懇は、財務省が大メディアの幹部に増税は必要だと刷り込む場でもあっただけに、反対派で論客の長谷川氏が加わって議論になることを嫌ったのだろう。
「財務省が相手にするのは御用マスコミと御用記者だけ。官房長がテレビ局に圧力をかけるくらいだから、私を懇談会に出席させないのは当然という感覚なのでしょう。以前は財務省の幹部が自らメディアで議論し、国民に増税の必要を説く姿勢があったが、今ではこの程度の役所に成り下がってしまった」(長谷川氏)
※週刊ポスト2012年1月27日号