北朝鮮では金正恩新体制が始まり、不安定要素が増す中、韓国では相変わらず「敵」とされるのは日本であり、北朝鮮ではないという。韓国の平和ボケを産経新聞ソウル駐在特別記者の黒田勝弘氏が解説する。
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韓国人は正月というと今も旧暦(陰暦)の方で祝う。贈り物をしたり家族が集まったり、雑煮を食べたりお年玉をあげたりなど、風俗としては圧倒的に旧正月(今年は1月23日)だ。休みもこちらの方が3連休になっている。
しかし年の変わり目、つまり新年というと新暦(太陽暦)の方だからややこしい。韓国も産業化・経済発展で国際化が進んだせいだろうか。あるいは会計年度が12月で終わり1月スタートのせいかもしれない。
それでも新年のあいさつ「新年多幸でありますように」は新旧両方でいうから、いささか可笑しい。
ただ回顧や展望が好きなマスコミの新年意識は新暦の方で、今年もにぎやかだった。ところが韓国のNHKともいうべきKBSテレビの元日、午前7時のニュースを見て「いやいや、まいった!」だった。
新年最初のニュースだから、とりあえず「初日の出」で始まった。韓国でも近年、初日の出をおがむ(?)のが流行になっている。元旦には、東海岸の浜辺など観光客でにぎわう。そんな各地の風景が紹介されたのだが、そのメインがなんと「独島での初日の出」だった。
現地から生の映像で「独島警備隊長」を登場させ「あいにく水平線は厚い雲におおわれて日の出が見えません……」だったが、それでも「国民の皆さまの独島に対する愛情と関心に応え、今年も島をしっかり守ることを約束いたします!」と決意表明させていた。
この期に及んでもまだ「独島」とは! 誰から「守る」のだろうか? 当然、日本!
この元日朝イチバンのニュースで北朝鮮が登場したのは経済情勢の展望で、辛うじて「北での金正恩体制のスタートも不確実要素の一つ」と触れていたくらいだった。
韓国では哨戒艦撃沈、延坪島砲撃……そして軍事ガチガチの金正恩・最高司令官の登場にもかかわらず、まだ「独島死守!」などといっているのだ。
今年の元日くらいは「厳寒の雪の休戦ラインで北をにらむ国軍兵士!」とか「波高い冬の海で北の再攻撃に備える西海司令部の海兵隊!」を期待したのだが、平和ボケは相変わらずだ。
※SAPIO2012年2月1・8日号