今年は日本の国内線に格安航空会社(LCC)が複数参入する。だが、既存の航空会社(レガシーキャリア)が、LCCを設立して生き残りに成功するのは難しいのではないか、と大前研一氏は指摘する。なぜなら、高コスト体質を、どうしても引きずってしまうからだ。以下は、大前氏の解説である。
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まず3 月にANA(全日本空輸)系のピーチ・アビエーションが関西国際空港を拠点として就航し、続いてANAが出資するエアアジア・ジャパンが成田空港を拠点に8 月から国内線、10月から国際線に参入、さらにJAL(日本航空)が出資するジェットスター・ジャパンが年内に成田と関空から国内線参入を予定している。
既存の航空会社とLCCでは、根本的にコスト構造が違う。たとえば、既存の航空会社は旅行代理店に航空券を売ってもらっているので、その手数料が7%かかる。一方、LCCは旅行代理店を使わず、自社サイトでネット直売しているだけだから、7%が要らない。
あるいは、パイロットやCA(客室乗務員)が、機内清掃やカウンターのチェックイン、預かり荷物の整理といった業務もこなしている。そうすることで地上スタッフの数を既存の航空会社より格段に少なくし、人件費を削減しているわけだ。
そもそも人件費の高い日本でLCCが成功するためには、人件費を抑制する画期的な創意工夫が不可欠だ。私が社長なら、社員の給料を半分にして休みを2倍に増やす。そして3か月に1回、自社路線が就航している国で4~5日間のバケーションを認め、現地ではパイロットやCAの宿泊用に安く契約しているホテルに原価で滞在できるようにする。
今の日本では、そういう条件を歓迎する若者が多いと思われるので、有能な人材が集まるはずだ。国籍を問わずに募集したら、もっと優秀な人が来るだろう。
※週刊ポスト2012年1月27日号