「冬うつ」ということばもあるように、冬はとかく気分が落ち込みがちになる人も多いという。ベストセラー『がんばらない』の著者で諏訪中央病院名誉院長の鎌田實氏が、人を幸せにしてくれるホルモン、セロトニンを分泌させる生活習慣について解説する。
* * *
人間の体は不思議だ。実は、見えない3つのシステムによって守られている。自律神経、免疫、内分泌のシステムだ。この1年を元気で過ごすために、今回は内分泌のなかの脳内物質のことを説明してみたい。
いまや、8人に1人がうつ傾向、というデータがある。ものごとをネガティブに考えてしまいがちで、いつも気持ちがうつうつとしている。こんな人が結構多いのである。8人に1人といえば、職場に1人か2人、うつ傾向の人がいるという計算になる。
最近、うつ病の薬で注目されているのは、セロトニンという脳内物質に働きかける薬である。セロトニンは、別名、幸せホルモン。人を幸せにしてくれるホルモンなのだ。 僕が見てきた患者さんの中にも、このセロトニンを分泌させることで奇跡的な快復を遂げた人がいる。
進行したがん患者や転移がみられるがん患者が、がんの3大治療である手術や放射線治療、化学療法に積極的に取り組むことで、進行がんでも治癒する人が出てきたのだが、よくなる患者の多くが、セロトニンを分泌するような生活習慣を持っていた。
セロトニンを分泌させるためには、リズム運動が大事だ。首を回す、ウオーキングやラジオ体操など、リズムをキープしながら運動すると分泌量が増える。こんな簡単なことでも、効果が出てくるのである。
セロトニンの原料は、必須アミノ酸のトリプトファンという物質だ。肉類や乳製品、赤身の魚に多く含まれるので、こういう食物を食べるのも効果的だ。
また分泌を促すために、太陽に当たるのがいい。夜型の人は、太陽に当たる時間が少ないから、注意が必要だ。
※週刊ポスト2012年2月3日号