通常時なら200万~300万円程度のマグロが、年の初めには20倍――。今年の築地市場の初競りで5649万円(269kg、1kg21万円)という史上最高額で大間産のクロマグロを競り落とした寿司チェーン「すしざんまい」は、一躍全国にその名を知られた。近年の注目度の高まりから、1月5日の初競りにはマスコミ26社が駆けつけ、最高値で落札するやメディアの取材が殺到した。
「マグロ大王」を自称して自ら解体をこなすなど広告塔として取材に対応し、やっと落ち着きを取り戻した株式会社喜代村の木村清社長が、白熱の舞台裏を明かした。
「今年は震災もあったし、是が非でも日本の皆さんに食べていただきたいという決意でした。そしたら高くなっちゃって(笑い)」
築地の初競りの“最高値争い”は、長らく喜代村の独壇場だった。転機が訪れたのは2008年。国内外で「板前寿司」を展開する香港の寿司チェーンが1本600万円で落札。翌年以降、日本の高級寿司店「銀座 久兵衛」と共同購入する形で、960万円(2009年)、1630万円(2010年)、3249万(2011年)と一級品を競り落とし、最高値は徐々に高騰していった。だからこそ、今年にかける思いは強かった。
「(2008年の時は)マグロが海外(香港)に行っちゃったっていうから、『それはちょっと違うでしょ』と思いましたよ。日本の初ものですから。昨年は3000万円までは追いかけたんだけどね。今年は『1キロ20万くらいかな』と仲買人には競り台に行く前にいっておいたんだよ。行ってからはもう口出しできないからね」
※週刊ポスト2012年2月3日号