国際情報

「次の総統選(2016年)はないかも」と台湾在住ジャーナリスト

国民党の馬英九氏が民進党の蔡英文氏を80万票差で破り、再選を果たした台湾総統選。現地で取材したノンフィクション作家の門田隆将氏は、台湾の未来についてこうレポートしている(文中敬称略)。

* * *
民進党系の有力なメディアの一つである『自由時報』政治新聞センターの鄒景ブン副編集長(※ブンは雨冠に文)はこんな興味深いことを指摘した。

「中国企業が台湾に進出するには、さまざまな規制が設けられていますが、馬政権は、おそらくこれを撤廃して、中国企業が株式を取得することも含めて、自由な活動ができるように法改正をすると思います。そうなれば台湾の企業は中国企業の傘下に入り、台湾人はそこで働き、事実上、中国と同じようになるのです」

これまでは、台湾資本による中国投資は認められてきたが、逆に台湾側は中国資本に対して厳しい制限を設けてきたのだ。

「日本など中国以外の国々には、台湾で投資することができない業種を示したネガティブリストというものがあり、それに載っていない業種にはかなり自由に投資ができます。しかし、中国だけは、逆にポジティブリストという限られた投資対象だけのリストしかないのです」(経済ジャーナリスト)

それが撤廃されたら、中国企業は自在に台湾企業を買収したり、放棄したりできるようになる。鄒副編集長によれば、

「中国側はすでに“一つの中国”という認識です。経済を背景に、馬総統に実際に中国との和平協議に調印させ、一つの中国になろうということです。これからの四年間は、本当に恐ろしいですよ」

在台歴二十八年になるジャーナリストの早田健文氏は、こう分析する。

「私は、このままの対中政策が続けば、早ければ四年後の総統選すらなくなるのではないかと予想しています。少なくとも十年後にはなくなっている。とっくに中国と台湾は一つになっているということです。香港のトップは“長官”ですが、香港と同じ名称は使わなくても、少なくとも“総統”という呼び方はなくなっているのではないでしょうか。

中国は、台湾に政府機能も、軍も残してあげるから、外交権だけは放棄してください、というわけです。それでも国連にこそ出られませんが、経済体として国際機関のメンバーにはなれる。“チャイナ香港”のように“チャイナ台北”などと呼ばれるようになるかもしれません」

少なくとも今の台湾は消えてなくなるのである。

「もう選挙で中華民国総統が選ばれる時代はなくなり、中国と一体になるのです。あれほど日本を気遣ってきた台湾の人たちが、中国と同じ思考で対応してくる。日本はこの地域で蚊帳の外に置かれてしまうでしょう。尖閣も中国は主権を主張していますが、台湾は漁業交渉しか求めていなかったのにそれすら日本は相手にしなかった。安全保障上、さまざまな問題が生じてくると思いますよ」

※週刊ポスト2012年2月3日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

第2次石破内閣でデジタル兼内閣府政務官に就任した岸信千世政務官(時事通信フォト)
《入籍して激怒された》最強の世襲議員・岸信千世氏が「年上のバリキャリ美人妻」と極秘婚で地元後援会が「報告ない」と絶句
NEWSポストセブン
モテ男だった火野正平さん(時事通信フォト)
【火野正平さん逝去】4年前「不倫の作法」を尋ねた記者に「それ俺に聞くの!?」 その場にいた娘たちは爆笑した
週刊ポスト
「●」について語った渡邊渚アナ
【大好評エッセイ連載第2回】元フジテレビ渡邊渚アナが明かす「恋も宇宙も一緒だな~と思ったりした出来事」
NEWSポストセブン
多くのドラマや映画で活躍する俳優の菅田将暉
菅田将暉の七光りやコネではない!「けんと」「新樹」弟2人が快進撃を見せる必然
NEWSポストセブン
三笠宮妃百合子さま(時事通信フォト)
百合子さま逝去で“三笠宮家当主”をめぐる議論再燃か 喪主を務める彬子さまと母・信子さまと間には深い溝
女性セブン
氷川きよしが紅白に出場するのは24回目(産経新聞社)
「胸中の先生と常に一緒なのです」氷川きよしが初めて告白した“幼少期のいじめ体験”と“池田大作氏一周忌への思い”
女性セブン
阪神西宮駅前の演説もすさまじい人だかりだった(11月4日)
「立花さんのYouTubeでテレビのウソがわかった」「メディアは一切信用しない」兵庫県知事選、斎藤元彦氏の応援団に“1か月密着取材” 見えてきた勝利の背景
週刊ポスト
10月には10年ぶりとなるオリジナルアルバム『Precious Days』をリリースした竹内まりや
《結婚42周年》竹内まりや、夫・山下達郎とのあまりにも深い絆 「結婚は今世で12回目」夫婦の結びつきは“魂レベル”
女性セブン
騒動の発端となっているイギリス人女性(SNSより)
「父親と息子の両方と…」「タダで行為できます」で世界を騒がすイギリス人女性(25)の生い立ち 過激配信をサポートする元夫の存在
NEWSポストセブン
九州場所
九州場所「溜席の着物美人」の次は「浴衣地ワンピース女性」が続々 「四股名の入った服は応援タオル代わりになる」と桟敷で他にも2人が着用していた
NEWSポストセブン
「SUNTORYドリンクスマイルBAR」
《忘年会シーズンにこそ適正飲酒を》サントリーの新たな取り組み 自分に合った “飲み“の楽しさの発見につながる「ドリンク スマイル」
NEWSポストセブン
「週刊ポスト」本日発売! 小沢一郎が吠えた「最後の政権交代を実現する」ほか
「週刊ポスト」本日発売! 小沢一郎が吠えた「最後の政権交代を実現する」ほか
NEWSポストセブン