今シーズンオフも、ダルビッシュ、岩隈、川崎らが日本球界から大リーグに移籍。このままでは日本球界は衰退してしまうのか? 答えはNOだ。いつの時代でも、新たな才能は現れる。“流しのブルペンキャッチャー”として知られるスポーツジャーナリストの安倍昌彦氏は、シアトル・マリナーズに移籍した不動のショート・川崎宗則の穴を埋める存在として、ドラフト1位で入団した3年目・今宮健太の名前を挙げる
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川崎宗則が君臨していた「遊撃手」のレギュラーポジションは、今季3年目の今宮健太が奪う。大分・明豊高からドラフト1位入団。川崎と同様、彼も「九州男児」である。高校時は投手として活躍し、甲子園でも小柄な体で150kmに及ぶ速球で奮投。当時の活躍を覚えておられる向きも少なくないだろう。171cm67kg。小さい。確かに、体は小さいが、コイツはエネルギーの塊だ。
今宮の高校3年の6月、『流しのブルペンキャッチャー』の取材で、彼の全力投球を受けている。明豊高のアップはすごい。両手に持った2本のバットを頭上高くかかげて、選手全員がグラウンドを走る。5周、6周…結局10周。アップで20人ほどがもう倒れる。やってごらんなさい。「ウチの練習、アップが一番辛い」と泣き入れていた彼の気持ちがわかるから。
すぐにノックをさんざん受けて、およそ1時間。息も絶え絶えにブルペンにやって来た彼は、「ちょっと休む?」と訊いても、「平気です!」と、ハアハア言いながら、目測145km前後の速球をたて続けに40球投げて、「バッティング行ってきます!」とグラウンドに駆け戻っていった。
快足、強肩は偉大な「先代」になんらヒケをとらない。昨季はファームで打率.287。67試合で26盗塁の走塁能力には、さらに大きな将来性が見える。蛇足を承知でいえば、今宮健太、「先代」以上の精悍なイケメンとお伝えしておこう。
今宮は一軍での実績は皆無だが、岩嵜、山田の若い高卒投手たちを、一軍の実戦の中で鍛え上げ、投の主軸に育ててきたチームだけに、その育成マニュアルは信用できる。そして、秋山監督自身が「未完の大器」としてプロ入り、高校時の投手から野手に転向する中で、彼らと同じように、実戦で成長していった選手だっただけに、期待はさらに膨らむ。
※週刊ポスト2012年2月3日号