今年の初競りで、大間産のマグロが5649万円の史上最高額で落札された。直接的な広告宣伝効果やブランド価値向上効果は10億円という試算もある。
「いやいや!(手を振って否定) 宣伝費として回収なんかできないんです。これから頑張って稼がなくちゃならないよ!」(マグロを競り落とした寿司チェーン「すしざんまい」を運営する株式会社喜代村の木村清社長)
フェラーリよりも高価なマグロは全国46店舗にその日のうちに届けられ、大1貫134円(赤身)~418円(大トロ)の通常価格で売られた。単純計算すれば原価は1貫1万5000円也! 木村社長がマグロにこだわり、多くの人に食べさせたいと願う裏には、「涙が出てしまう」(本人談)切ない物語があった。
「4つの時に父親が亡くなって、うちは貧乏になっちゃって。お袋がきょうだい3人を女手ひとつで育ててくれたんです。そんなお袋は、冠婚葬祭に行くと、料理に出されたマグロを2切れだけ食べないで持って帰ってくるんです。
『分ければ(数が増えて)余る』といって、一切れを半分にし、さらに半分にして4人で食べたんです、おいしいねえっていって……」
母の教え通り、日本人においしいマグロを“切り分けた”木村社長。来年について問うと、「お客さんにもいわれますが、まあ頑張ります」と謙虚に答えた。
※週刊ポスト2012年2月3日号