淡泊な風味であるがゆえに、いろいろな料理に応用されるのが豆腐。……というわけで、『アリガット』誌の元編集長・小川フミオ氏がセレクトした絶品豆腐料理として、『美味』(東京・代官山)の「麻婆豆腐」を紹介します!
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豆腐に味はあるかないか。日本人なら味も香りも「ある」と答えるだろう。中国人も、麻婆豆腐の肝は豆腐の味がすること、という。2000年前に豆腐を作った国だけある。
ここで紹介する『美味』の麻婆豆腐も豆腐の味がちゃんとする。
かつては、炒り豆腐のような独特の麻婆豆腐を提供していて、白いご飯にのせて食べると実にうまかった。甘さが強めの味つけながら、胃もたれしない仕上がりは、他になかなか類がなかった。
中国料理の辛さは、山椒の辛さである麻(マー)と唐辛子の辣(ラー)といわれ、麻婆豆腐の独特の刺激はこの2つからなっている。ただし、『美味』の麻婆豆腐は、麻も辣も抑えぎみ。先に書いたように、豆腐を味わう料理の立派な一形態として評価できるのだ。
なので、辛さがそう得意でなくても、レンゲを運ぶペースは速くなり、すいすいと食が進む。女性オーナーの店だけに、料理の見た目の美しさも特徴。これも個性になっている。
■『美味』の「麻婆豆腐」1050円
【住所】東京都渋谷区猿楽町11-6 サンローゼ代官山2F
【営業時間】11時半~14時半(LO)、17~22時(LO)、土日祝は通し営業
【定休日】無
【カード】可
ランチは5種類の料理が週ごとに入れ替わる。「小海老ととうもろこしの塩味炒め(1050円)」、「ホタテとブロッコリーの炒め(1050円)」ほか計30種。ランチで麻婆豆腐を食べに行くときには、事前に確認を。一品料理では常に提供されている。台湾出身の人気歌手・欧陽菲菲の実妹の欧陽ペペ(ペは草かんむりに倍)さんがオーナーを務める。
撮影■岩本朗
※週刊ポスト2012年2月3日号