仕事やプライベートで、ますます使用頻度が高くなっているパソコン。急速に普及した薄型テレビやスマートフォン(以下、スマホ)、LED照明。これらの電子機器が発する“ブルーライト”が、目に大きな負担を与える可能性が考えられるようになった。
■ブルーライトとの過剰な接触が目の負担に
南青山アイクリニック東京の副院長・井手武医師は、ブルーライトについて、
「光は、波長が短いほうから、X線、紫外線、可視光線(人間が肉眼で感じられる光)、赤外線などに分けられます。可視光線の中でもっとも波長が短く、エネルギー量が高い青色領域の光を“ブルーライト”と呼ぶのです。
ブルーライトは、赤色などの波長の長い光に比べて、光が散乱しやすく、目に映る像をぼけさせやすいという性質があります。また、紫外線と同じように、目の角膜や水晶体で吸収されず、目の奥まで到達してしまうことも特徴です」と、解説する。
現在、パソコンの多くをはじめ、薄型テレビやスマホには、画面が美しく見えるよう、液晶モニターが採用されている。そのバックライトに使用されるLED(発光ダイオード)が従来のブラウン管などと比べて青色光の比率が高い青色領域の光を多く発するといわれる。
「ブルーライトはもともと太陽光に含まれている光ですし、体内時計を調整する働きがあります色調にも大切ですから 青色光がすべて必要ないというわけではありません。
問題は、長時間にわたるパソコン作業や、夜間もパソコンやテレビ、スマホなどを見ることで、日常的に目に入ってくる“ブルーライト”の量が増加していること。
ブルーライトを浴びすぎると、目の疲れや痛み、さらに肩こりや腰痛といった症状が出やすいともいわれています。また、まだ証明されてはいませんが、長期的に浴び続けることで、失明原因の上位に入る加齢性黄斑変成などにも関連するかもと示唆されています」
■「淡黄色のレンズによるブルーライト削減」効果を実証
目に入るブルーライトの量を適切に保つ方法として、井手医師は次のような方法を提案する。
「夜間はなるべくパソコンやスマホを使用しない、テレビを見る時間を減らすなど、液晶画面とのつきあい方を考えることが大切。また、目のダメージを回復するには、1時間おきにモニターから離れて目を休める、睡眠を充分にとることも有効です」
度数の合ったメガネやコンタクトレンズを使用し、年に一度は眼科検診を受ける、モニターの位置を低めにして、ドライアイによる像のぼけを防ぎパソコン作業中に目を開きすぎないようにするといった、基本的な対策も必要だという。しかし一方で、現代社会において、パソコン作業や液晶を見る時間を減らすことには、限界もある。
そんなニーズを受けて開発されたのが、アイウェアメーカー「JINS(ジンズ)」が開発したパソコン作業用メガネ『JINS PC(ジンズ・ピーシー)』。このメガネに使用されている淡黄色のレンズは、ブルーライトを55%カットし、目の疲れを軽減する効果があるという。
昨年、このメガネの効果を実証する実験も行われた。実験に参加したのは、日本マイクロソフト社に在籍する124名。2週間にわたり、『JINS PC』使用時と、未使用時の目の疲れを比較したところ、「ピントが合わない」「モニターがギラギラ光って見える」「目の周りや奥が痛い」「首・肩・背中・腰が痛い」など、パソコン使用時に起こりがちなトラブルが改善されたという結果が報告された。
この実験を監修した井手医師は、この結果についてこう語る。
「パソコンの発する光をカットするだけで、実際に、ここまで明らかな結果が出るとは想像していませんでしたので、眼科医としても驚いています。
南青山アイクリニック東京でも、20名程度が参加して、目の疲れを比較するプレ実験を行いましたが、2時間程度の作業でも、『JINS PC』を使用したほうが、眼精疲労を計測する検査において有意に疲労が少ないという結果を得ることができました」