65才以上が人口の23.1%を占め、4人に1人が高齢者という「超高齢化社会」が目前に迫る日本。同時に“単身化”も進み、「孤独死」が社会問題になりつつある。自宅で孤独死する高齢者は10年で倍増し、東京23区内だけで年間2000人を超える。2009年に内閣府が60才以上の高齢者を対象にした調査では、単身世帯の65%が「孤独死を身近な問題」と感じていた。
こうした危機的状況に救いの手を差し伸べようとする人もいる。シニアの友達づくりや生き方探しを支援するコミュニティー・サイト「シニア・ナビ」事務局長の田嶋美登里さんがいう。
「孤独死のニュースが続くなか、『私が死んでも何日も発見されないかも』と不安に思うシニア世代が増えました。孤独死を防ぐためにもこのサイトが生かせればいいと思います」
同サイトの登録会員数は現在、60代を中心に1万人。男女比は7:3で参加者はネット上に自分のブログを公開し、気に入った投稿があればメールを出すなどして交流する。
田嶋さんが「シニア・ナビ」を立ち上げたのは1999年。シニア向けの本格的なコミュニティー・サイトとしては日本で初めてだった。
「高齢者と口にすれば『介護』と返ってくるけど、いまや日本人のほぼ4人に1人が65才以上になっています。高齢者世代が元気でないと日本が元気になれないと思い、シニア世代のためのコミュニティー・サイトを立ち上げたのです」
12年前にシニアには遠い存在だったパソコンも現在は一家に1台、いやひとり1台、持っていて当たり前になり、年月とともに会員は順調に増えていった。会員の評判も上々だ。
「毎日アクセスしてメールをやりとりするのが楽しみ。メール交換が老後の生きがいになっています。人生が明るくなりました」(65才女性)
「定年退職して地縁や仕事のつながりはなくなったけど、空間を飛び越えて海外の会員とつながるのが楽しい」(70才男性)
男女問わず、“つながり”が大きな入会動機になっていると田嶋さんはいう。
「とくに単身者はつながりを求めています。シニアのブログは生きてきた年数が多い分、内容がすごく充実しています。会うと無口でも、ブログでは思っていることを吐露する。文章も上手だし、ひとりひとりにドラマがあり、思わず引き込まれます」(田嶋さん)
闘病日記や介護日記など、日常の苦労を綴るブログも多い。“入魂”の文章を読んでいるうちに思い入れが強くなり、深い絆を感じるようになる。ネットとはいえ、つながりが浅いというわけではないようだ。メンバーが実際に顔を合わせることのできるオフ会も、年に3、4回行われている。
「ブログを読んだり、メールをやりとりしたりするうちに、相手の人柄を理解するようになります。するとオフ会で初めて顔を合わせて『あなただったのね。感激した』と涙を流すかたもいます。ネットは心の交流が先です。お互い初めて会ったのに旧知の仲のようですよ」(田嶋さん)
※女性セブン2012年2月9日号