東京大学地震研究所の研究チームが「M7級の首都直下型地震が今後4年以内に70%の確率で発生する」との試算をまとめた。東日本大震災から1年もたっていないなか、新たな地震の脅威が首都圏に迫りつつあるというわけだ。
東日本大震災では津波による被害が甚大だったが、直下型地震の場合、建物の破損と火災が危惧される。そこで大切なのは建物の強度。阪神・淡路大震災で倒壊した家屋のほとんどが、震度6程度に耐えられる強さを耐震基準とした1981年6月以前に建てられたものだった。しかし、防災情報機構会長の伊藤和明氏は「日本全国に1981年6月以前に建てられた建物はまだ3割も残っている」という。
「耐震性が不足となっているものもあり、こうした建物は震度6強を超えると倒壊してしまう可能性がある。自治体によっては無料で耐震診断を実施してくれたり、補強のための費用を補助してくれる制度を設けているところもある。心配なかたは一度自治体に相談してみるといいでしょう」(伊藤氏)
しかし、新しい耐震基準に基づいて建てられたものならどれも同じ強度というわけではない。マンションを選ぶ場合は「耐震」「制震」「免震」という建物の構造によって大きな違いが出る。一級建築士で地震災害に詳しい井上恵子氏は説明する。
「いちばんポピュラーな地震対策である耐震構造は、柱を太くしたり、鉄筋を増やしたりして建物自体の強度を上げるもの。建物の損壊を防ぐことはできますが、揺れ自体は防げません。
次にタワーマンションに多く使われている制震構造ですが、これは建物に揺れを抑えるバネのような役割をするダンパーを取り付ける技術。風による揺れには効果的なのですが、地震の揺れはわずかしか軽減されません。
地震の揺れに最も効果的なのは免震構造。建物の基礎部分にゴムを入れたもので、地震時の上部建物の揺れが3分の1~5分の1程度に抑えられます」
揺れが抑えられれば、当然建物に対するダメージも少なく済み、家財の損失を減らすことができる。家具が倒れることで怪我をする可能性も軽減される。しかし、そんな免震構造もメリットだけではない。危機管理教育研究所の代表・国崎信江氏はこう話す。
「建物の大きさによって異なりますが、平均的には設置するのに、5000万円ほど、メンテナンスには年間3万円ほどかかるといわれています。賃貸であっても家賃や管理費に影響してくるでしょう。また、免震は台風などの強風の際には大きく揺れてしまうという弱点もあるんです」
※女性セブン2012年2月9日号