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「もう一度聞きたい」の声あるブータン国王国会演説を再録

ブータン・ワンチュク国王のわが国会議事堂でのスピーチを、いまなお感銘冷めやらぬ余熱を覚えるのか、もういちど聞きたい読んでみたいという要望を処々方々で聞く。それは、日本および日本人を称揚しながら、あなた方は大事なものを忘れてはいないかという静かな問いだった。作家の山藤章一郎氏が解説する。

* * *
いったいワンチュク国王は、なにを語ったのか。2011年、日本国国会での演説を、衆議院速記録より、もういちどできるだけ長く再録する。

「天皇皇后両陛下及び日本国民の皆さまに対し深い敬意を表します」

「我々ブータンに暮らす者は常に、日本国民を親愛なる兄弟姉妹であると考えてまいりました。家族、誠実さ、そして名誉を守り、個人よりも地域社会や国家の望みを優先し、また自己よりも公益を高く位置づける強い気持ちによって両国民は結ばれています」

「日本国民の皆さまは最悪の状況下でさえも、静かな尊厳、自信、規律、心の強さをもって対処されました。文化、伝統及び価値にしっかりと根差したこのような卓越した資質の組合せは、我々の現代の世界で他に見出すことはほぼ不可能です。すべての国がこれを熱望しますが、これは日本人の特性の不可分の要素です」

「ご列席の皆さま、ブータンは、人口約70万人の小さなヒマラヤの国です。国の魅力的な外形的特徴と、豊かで人の心を捉えて離さない歴史が、ブータン人のあらゆる性質を形作っています。ブータンは美しい国であり、面積が小さいながらも、国土全体に広がる多様な地形に数々の寺院、僧院及び城砦が点在し、何世代ものブータン人の精神性を反映しています。

手つかずの自然があり、我々の文化と伝統は強靭で活気を保っています。ブータン人は何世紀も続けてきたように、人々のあいだに深い調和の精神を育む、質素で謙虚な生活を送り続けています」

「今日のめまぐるしく変化する世界において、国民が何よりも調和を重んじる社会、若者が優れた才能、勇気および品位を持ち、先祖の価値観によって導かれる社会、そうした思いやりのある社会で生きる我々のありかたを私は最も誇りに思います。

わが国は有能な若きブータン人に懸かっています。我々は歴史ある価値観を持つ若々しい現代的な国民です。小さな美しい国でありますが、強い国でもあります」

「日本政府、およびブータンで暮らし、我々とともに働いてくれた日本人の方々のブータン国民への揺るぎない支援と善意に対し、感謝の意を伝えることができて大変嬉しく思います」

最後に、国のことば〈ゾンカ語〉で祈りを捧げた。日本と日本人に深い敬意を払いつつ、自国への誇りあるスピーチだった。

※週刊ポスト2012年2月3日号

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