“すっぴん公開タレント”が急増している。最近だけでも、資生堂のCMイベントでは武井咲(18)が、バラエティー番組では叶姉妹、TBSの田中みな実アナ(25)が、ブログではきゃりーぱみゅぱみゅ(18)、雛形あきこ(34)らが続々とすっぴんを公開しているのだ。シミもシワもきっちりメイクで隠してスポットライトを浴びるのが女性タレントの“テッパン”のはず。なぜ、すっぴんを公開する人が増えているのか? その心理について、駒沢女子大学教授で心理学者の富田隆さんが分析した。
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ひとことでいうと、裸になりたがる露出を好む心理とサービス精神が背景にあると思います。このふたつがかなり強くなった場合、こういう行動に出る。キーワードは“ペルソナ”です。精神科医で心理学者のユングは、人格の外側、社会と接触している部分をペルソナ=社会的仮面と呼んでいます。役割期待ともいいますが、我々は職場や家庭など色々な役割を同時に持ち、それぞれの役割に応じて仮面を被り、話し方や立ち居振る舞いなどを全て変えるわけです。
女性の場合、化粧などで見せ方を自分で好きなようにできる部分もあって、「社会で私はこう見られたい」という自己主張の部分と社会的な役割期待、このふたつが掛け合わさってペルソナができます。問題は、ペルソナと自我の区別が分からなくなってしまうケースです。それが、今回のすっぴんを公開する女性タレントの心理にあるのではないかと考えられます。いつのまにかペルソナが自我だと思いこんでいる状態、つまり、心理的には、化粧を落としたすっぴんの姿を、化粧した姿と同じ自分だと思い込んでいるわけです。
服装や化粧はすべてペルソナの一部です。口紅だけでも社会的仮面を被ることになるので、化粧のもっている意味は大きく、心理学的には、化粧を完全に落としてしまうのは、裸になるのと同じことです。多くの場合、すっぴんは恋人や夫の前でしか出さないものなので、公の場で服を脱ぐのと同じことになります。
また、サービス精神という面では、人前で表現する職業である芸能人は、もともとサービス精神が旺盛で、露出狂的になりやすい面を持っているといえます。ペルソナは周りからの期待によって半分作られています。この期待によって作り上げられたものを、本当の自分だと思い込んで区別がつかなくなっているのは、芸能人としてのペルソナに自我が乗っ取られている状態です。
化粧ぐらい落としても、それが同じ自分だと思ってしまう。メディアも含めて作り上げられた“女優の○○さん像”みたいなものに過剰なサービス精神で応えてしまい、それを公私問わず演じてしまっている。そうでなければすっぴんをさらしたり、さらしたすっぴんを「キレイ」といわれて喜ぶことはあり得ないはずです。
すっぴんを公開する人が増えていることには、ちょっと危なさを感じます。ペルソナを全部とっぱらって好きなように行動したい、社会的立場のない赤ん坊のような自分になりたい、という願望は誰しもありますが、それが強くなり、さらに他者に見せたいとなるとある意味では露出狂と同じになってしまうのです。