観客動員ワーストを記録した初場所が終わるや否や、角界ではなぜか熱い攻防が始まった。2年に一度の日本相撲協会の理事選が、1月30日に迫っているためだ。
今回の理事選では10席の理事の椅子に12人が出馬する見込みだが、唯一“当確”と見られているのが、北の湖親方の理事長再就任だ。しかし、「部屋所属力士の大麻騒動で辞めた北の湖親方に改革はできない」という声もあり、貴乃花理事長待望論も上がっている。
この貴乃花理事長待望論、あながちバカにはできない。「投票になれば貴に入れると公言している若手は多い」(ある若手親方)とされ、既に当確扱いとの見方も強いのである。
理事長は理事の互選で決まるが、若手の支持に加え、“文科省の意向”が露骨に示されれば、ベテラン理事たちも無視しにくい。このムードに危機感を覚えた守旧派親方衆が素早い“改革”に踏み切った。
目をつけたのは「投票方法」である。前回の理事選では、候補者に○印をつける方式だったために造反が可能となり、貴乃花理事が誕生した。だが、今回の投票ではそれ以前の「記名式」に戻し、投票箱も立会人の目の前に置く方式になったという。
「筆跡を見れば裏切り者はすぐに分かる。造反者がいないと当選ラインに届かない貴乃花の状況を知って、守旧派が仕掛けたとしか思えない。この方針を決めた選管委員の委員長が、貴乃花と理事の椅子を争う友綱親方(元関脇・魁輝)の部屋に所属する武隈親方(元関脇・黒姫山)だというのも興味深い」(相撲ジャーナリスト)
新理事は公益財団法人移行に向けた制度改革の重要な役割を担うことになるが、鮮やかな「決まり手」は、期待できそうにない。
※週刊ポスト2012年2月3日号