30年前に使用に関し大論争となりながら、いまだに認可されていないがん治療薬の“丸山ワクチン”。しかし有償治験薬として現在も年間3万人が使用する。
がんの治療薬として認可されていないにもかかわらず、長年にわたって多くの患者に使われ続けているのは、当然、それだけの効果があるといわれているからである。
例えば、2004年から2005年の2年間に丸山ワクチンを投与された患者の中に、「投与開始時点でステージIII~IVの進行大腸がん」「病理組織が確認されている」「丸山ワクチンを10年以上使用している」という3条件を満たす症例が162例あった。つまり、進行大腸がんでありながら、丸山ワクチンを投与されて10年以上延命している患者の例が162あった、ということである。生存年数の最長は33年だったという。
さらに、その162例のうち77例は非治癒切除(患部を摘出していない)、術後再発(手術したが再発した)、試験開腹(がん確認のための開腹)等の治癒困難例であり、しかもそのうち35%にあたる27例が丸山ワクチン以外の治療を受けていなかった。これは、進行がんの患者に対しても、丸山ワクチンだけを使った治療で十分な延命効果があることを証明しているといえるのではないか。
同時期の胃がん患者の場合、前出の3条件を満たす症例は126例。胃がんの場合、完治には治癒切除しかないというのが常識だが、45%にあたる57例は治癒の望めない非治癒切除、術後再発などだった。最長使用例は、調査時点で78歳の女性の「34年」。1970年にステージIVで非治癒切除に終わり余命半年といわれ、抗がん剤治療をしたがすぐに断念、1971年に丸山ワクチンを開始して他の治療はせずに2005年時点も存命だった。
日本医科大学付属病院ワクチン療法研究施設所長の永積惇氏が話す。
「丸山ワクチンの使用を続けることでがんが縮小したり、消失したりするケースもあります。消失しなくても、全身の状態が良くなり、延命できるケースが少なくありません。また、がんが進行すると、痛みや食欲不振など、患者さんにとって非常につらい症状が現われるのですが、丸山ワクチンがそうした症状を消してくれるケースが多く見られます。つまり、QOL(クオリティ・オブ・ライフ)を向上させてくれるのです」
※週刊ポスト2012年2月3日号