ブータン・ワンチュク国王の来日で昨年末突如湧き起こったブータン・ブーム。とりわけ、小さな桃源郷といわれるその質素ではあるが豊かな暮らしに注目が集まり、“幸福度世界一”との調査結果もある。では、ブータンの人々の生活感とはどんなものなのか。作家の山藤章一郎氏が解説する。
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「日本に来てくれて、福島に来てくれてありがとう」「ご結婚おめでとう」「ブータンってどんな国?」
東京神田にある〈ブータン王国名誉領事館〉には、年が明けても問い合わせが途切れない。徳田ひとみ名誉総領事と、職員の福濱恵子さんの話。
「母国語のゾンカ語には〈幸福〉という概念はないんです。だから〈幸福度〉調査は『飼ってる鶏は太ってる?』とか。
結局、家族がいてごはんが食べられたら幸せだと。他に要るもの、欲しいものはない。仏教は、嫉妬、怒りなど負の感情は罪なんです。
幼いころから自然にやってきた精神コントロールが〈幸福〉につながっているのです。日本の、物質や利便を追求する生き方とはまるで違います。
小さな桃源郷といわれてますが、なるほどあの国に行けばそんな気持ちになりますよ。みんな穏やかに暮らしています。ポブジカという村がありますが、電気の配給は断った。電線やなにか通すと、鶴や渡り鳥が来なくなるからです。
自分たちの快適より、自然を守る。相手を考える。それがブータンの人が感じる幸せの基盤じゃないかと思います。
でも、不便ですよ。ホテルは夜中に薪ストーブが消えて寒い寒い。がたがた震えて朝になっちゃったって」
※週刊ポスト2012年2月3日号