65才以上が人口の23.1%を占め、4人に1人が高齢者という「超高齢化社会」が目前に迫る日本。自宅で孤独死する高齢者の数も10年で倍増し、東京23区内だけでも年間2000人を超える。そうしたなか、まずはパソコンにトライし、ネットで交流を広げ、おひとりさまであっても自立し、生き生きとした毎日を送るシニアたちが増えているという。
「そうはいっても、いまさらパソコンは難しくて…」と躊躇しがちなお年寄りの背中を押したのが、大川加世子さん(81)が代表を務める「コンピューターおばあちゃんの会」(東京都世田谷区)だ。同会の会員は250名を超え、6割がひとり暮らし。男女比は4:6で平均年齢78才、最高齢は90才という。
大川さんは1990年代にパソコンをいち早く購入し、キッチンの片隅でノートパソコンを広げる日々を過ごした。パソコンとインターネットが普及の兆しを見せるにつれ、「高齢者が孤立しないでつながっていくためにパソコンが不可欠な時代がくる」との思いを深めた。 「高齢者のパソコンライフを広げることを私のライフワークにしようと思いました」という。
しかし、当時所有していたパソコンは1台だけで教室を開く資金もなかった。役所に支援を訴えても、「お年寄りにパソコンなんて必要ない」と門前払いにされた。
大川さんは負けなかった。1997年3月に、世田谷区広報に「コンピューターで遊びませんか」という2行告知を出して、定員40人の区役所会議室と、販売店の協力を得てパソコンを借りると、予想を上回る150人もの高齢者が詰めかけた。大川さんはそのときのことを振り返る。
「傘をさして杖をつきながらたくさんのお婆ちゃんがやって来ました。堅苦しい『教室』ではなく『遊び』にしたのがよかった。芸術好きのかたにインターネットの美術館サイトを紹介し、30年故郷に帰っていないかたに田舎の風景を検索してあげると歓声があがりました。みなさん帰るころには 『パソコンっておもしろいのね!』とすっかり魅力に取りつかれていましたよ」
仕事や学校でパソコンになじみのあった若者や男性サラリーマンのサポートを得て、次第に会員が増えていった。高齢者がパソコンに興味を向けるのは、単に使い方を学びたいからではなかった。
「17年前、会に集まる人はパソコンを習いたいのではなく、“世の中から置いていかれるのがイヤ”というかたたちでした。『ワケのわからないカタカナ語が飛び交っているけど、私たち置いていかれているの? 大丈夫?』という焦りがありましたね」(大川さん)
一方でこんな声も多かった。
「87才で入会したおばあちゃんに理由を聞いたら、『何もやることがなくなったから』って。高齢になるほど、たいていのことをやりつくしちゃう。だからパソコンを始めてみたいとはいってきたんです」(大川さん)
※女性セブン2012年2月9日号