中国では1月23日に日本の元旦に当たる春節(旧正月)を迎えた。この日から1年が始まるが、今年は辰年で、「望子成龍(わが子を龍に)」との言葉通り、中国人の多くは、大げさに言えば“龍信仰”をもっている。子供の大成を願って辰年の子を望んでいる親は多い。このため、「2000年のミレニアムベビー」「2008年のオリンピックベビー」を抜いて、中国では空前のベビーブーム到来が予想されている。
中国国家統計局によると、2011年の中国の人口は13億4735万人で、このうち出生者数は1604万人だったが、北京大学で人口問題を研究する陸傑華・教授は「今年は辰年だけに、2000万人の大台に乗ることは間違い」と指摘している。
この理由について、陸教授は「『80後』と呼ばれる1980年代に生まれたベビーブーム世代が結婚し、子作り・子育ての時代に突入していることが大きな要素だ。さらに、これに拍車をかけているのが、中国政府による『一人っ子政策』の緩和方針だ」と分析する。
中国では昨年11月、河南省で、一人っ子同士の夫婦には第二子の出産を認める条例が可決されたことで、中国の31省(直轄市・自治区を含む)すべてで一人っ子同士夫婦の第二子出産が認められることになった。さらに、中国政府は今年から、どのような夫婦でも例外なく第二子を認める方針と伝えられており、今年が辰年であることも相まって、ベビービームが到来するというわけだ。
このため、すでに「辰年ベビーブーム」需要を見越して、北京ではベビー服のカバーオールが150元(約1800円)から180元(約2200円)に値上がりするなどベビー用品が大幅に値上がりしているほか、“月嫂(ユエサオ)”と呼ばれる産後のベビーシッターの給料も2001年には月500元(約6000円)だったものが、2011年には月4000元(約4万8000円)にまで値上がりしているという。
一方で、ベビーブーム到来に悲鳴を上げているのが香港の医療機関だ。香港特別行政区政府によると、昨年6月までに1年間で、香港で生まれた子供の数は9万5337人で、前年同期の8万4662人より12.6%増加し、過去9年間で最高の出生率を記録したが、実はこのうち、中国本土から香港入りした妊婦から生まれた赤ちゃんが4万5724人で全体の47.9%を占め、昨年の3万8579人に比べて18.5%増。父母ともに香港籍でない赤ちゃんは3万6884人で、前年比18.1%増で、9年前に1602人だったのに比べて、23倍にも激増したことになる。
この背景には香港の医療技術が高いこともあるが、香港で産まれた子どもは香港の市民権を得られるため、教育や就職が有利になることがあげられる。
香港での出産ラッシュのおかげで、夫婦とも香港人の子供が香港の病院で出産できないという深刻な事態も起こっているほどで、今年も大きな混乱が発生することが予想されている。