朝起きられない、動悸がする、光がまぶしい、風邪をひきやすい、頭痛やふらつきがある、だるい、気分が落ち込みやすい、下痢や便秘になりやすい、何もしたくない…。そんな体調不良がずっと続いているのに、健康診断でも特に異常は見当たらない。
「こういう症状を不定愁訴といいますが、自律神経失調の症状です。どこの病院の外来にもこの症状の患者さんは多くいますが、治らないので多くの病院を次々と受診する“ドクターショッピング”を行い、毎年10兆円もの大金が無駄遣いされています。そして実はこのような体調不良の大半の原因は“首こり”にあるのです」と指摘するのが、医学博士の松井孝嘉さんだ。
松井さんは昨年、更年期障害、慢性疲労症候群、胃腸障害、ドライアイに悩んでいる人も、首こりをとれば治るという著書『うつ 頭痛 めまい 不定愁訴 「首こり」をとれば90%以上完治する』(小学館刊)を上梓した。
「簡単にいえば、首の筋肉のこりが自律神経失調状態を起こし、さまざまな体調不良を引き起こしているのです。医学用語では“頸性神経筋症候群”といい、30年以上前に私が発見しました。一般の人でもわかりやすいように“首こり病”とも呼んでいます」
自律神経とは、消化管の動きや心拍数、血圧、体温など人間の生命維持活動を制御している神経のこと。自律神経には、心身にとってアクセルの働きをする交感神経と、ブレーキの役割を果たす副交感神経があり、仕事やスポーツなど心身を活発にするときは交感神経が優位になり、くつろぐときには副交感神経が優位となる。ところが首こり病になると副交感神経が働かなくなってしまうのだとか。
「首こり病は、いわばブレーキが故障した状態。副交感神経の働きが落ち込んでブレーキの利きが悪くなり、結果的にアクセルを踏みっぱなしの状態になっているのです。ブレーキが故障したまま走らされ続けているわけですから、心身のあちこちにトラブルや不調がおきてしまうのです」
さらに、首こり病が悪化すると、90%以上の人にうつ症状が起こるという。気が滅入ったり、何もする気がおきなかったり、わけもなく不安にかられたり…。
「精神疾患の“うつ病”とは別の疾患です。首こりが原因の自律神経失調からおこる“うつ症状”を、私は“頸性新型うつ”と呼んで区別しています。“頸性新型うつ”は、抗うつ剤などの投薬治療やカウンセリング治療を受けても別の病気なので治りません。しかし首こりを治せば95%の人が完治します」
と松井さんはいう。
「いままでは首は医学の盲点でした。首の筋肉が原因で起こる病気はないというのが常識だったのです。首こり病は、内科、眼科、耳鼻科、整形外科、消化器科などさまざまな科の症状が出るので、どこの病院を受診しても対症療法の薬をくれるだけで、根本的治療ができなかったのです」
※女性セブン2012年2月9日号