高齢者の「終の棲家」として、近年、民間事業者が運営する「有料老人ホーム」が急増している。
ホームの終身利用権を得るために、契約時に数十万円から数千万円の「入居一時金」がかかり、入居後は毎月、管理費、食費、光熱費などを含む「月額利用料」を支払うケースがほとんど。入居一時金は一定期間内に退去すると一部が払い戻される。
例えば入居金1000万円で初期償却率が20%、償却期間が10年とあれば、200万円は入居時にホームのものになるが、残りの800万円は毎年80万円ずつ償却される。つまり5年で退去すれば400万円が払い戻されることになる。有料老人ホームのお金にまつわる疑問を以下、Q&Aで紹介しよう。
Q:100歳まで生きても追加料金はない?
A:入居一時金を支払えば終身利用権を得られるため、長生きをしても、毎月の費用以外に追加料金を払う必要はない。これは入居時に敷金だけを払うホームでも同じ。
Q:入居一時金が償却される方法は?
A:「定額償却」と「定率償却」の2つがある。前者は入居一時金から初期償却分を引いた残りの金額を償却期間で割るため、毎年の償却額が同じになる。後者は残りの金額をホームが定める一定の割合で1年ごとに償却していくため、償却額がはじめは大きく、だんだん小さくなる。定率よりも定額のほうが一時金は目減りしにくいため、数年での途中退去を考えている場合は定額償却のホームのほうがよい。
Q:長く生きるほど得か?
A:入居一時金を支払うホームであれば得である。居室と共用スペースの終身利用権を得られる入居一時金は、制度上は「家賃の前払い」という扱いになっている。つまり、償却期間を過ぎて長く入居すればするほど、一か月平均の家賃が安くなるということになる。償却期間は入居者がホームで暮らす平均期間を推定したものであり、平均余命をもとに決められている。
※質問の回答は、以下の専門家のアドバイスと資料をもとに、本誌が作成した。●専門家 全国有料老人ホーム協会の和田四郎・理事長/高齢者住宅情報センターの米沢なな子・センター長/日本有料老人ホーム紹介センターの武谷美奈子・チーフアドバイザー/税理士の関本秀治氏/有料老人ホーム情報館 ●資料 『多様化する有料老人ホームに関する実態調査報告及び利用者等に関する調査報告』(平成22年3月・全国有料老人ホーム協会)
※週刊ポスト2012年2月10日号