各社春モデルが量販店の店頭にも並び始めているが、2012年の春は「ウルトラブック」合戦の様相を呈しているらしい。ウルトラブックとは、昨年5月に台湾で開催された“IT見本市”「COMPUTEX TAIPEI 2011」で発表された「インテルのCore iシリーズを搭載し、本体の厚さは2cm以下、販売価格は1000ドル以下程度」という基本コンセプトに基づくもの。
つまりウルトラブックとは、「薄い」、「軽い」、「高性能」、「低価格」を実現したモバイルノートパソコンのことだ。1月31日時点で東芝、Lenovoがそれぞれ1種類、日本Acer、ASUSが2種類発表しているほか、2月には日本HPも発売することを発表。今後国内家電メーカーも相次いで参入するという報道もある。
ノートパソコンと、結局何がどう違うのか?
ウルトラブックが何故薄くなっているか、という点では、大きくは「DVDドライブを無くした」点。これまでのノートパソコンというのは、基本的にDVDドライブを搭載(カスタマイズモデルを除く)。「ノートパソコンをメインマシンにするユーザーも多かった」ためだ。この「ウルトラブック」は、基本的に「2台目」を想定しているため、とにかく軽く、薄くということを念頭に開発すると、持ち歩くときにはDVDドライブは取っちゃえ!ということになるようだ。結果、13.3ワイド型で最軽量なのは東芝の「dynabook R631」で1.12キロ。
さらに、ほぼすべての機種がSSD搭載。SSDというのは「起動が早いが容量は少ない」ハードディスクである。すぐに立ち上げたい!というニーズに向けたものだが、SSDはHDDに比べて容量が少ないため、こまめに外付けHDDに記憶させる必要がありそう。SSDのもう一つの難点は高価なところで、筆者が数年前にSSD搭載のノートパソコンを購入したときには数十万円もしたものだが、これらのウルトラブックはSSD搭載ながらも10万円前後~15万円とかなり安くなったといえる。ちなみに日本AcerだけがウルトラブックでもHDD搭載モデルを発表しており、その分SSD搭載モデルよりも安い(5万円~8万円、1月30日現在)。
容量の少なさなど、薄さ・軽さを求める一方で犠牲になったものに注意しなくてはならないといえるが、注意点はほかにもある。拡張性だ。ポート類が少ないものが多く、東芝で3つ、エイサー、ASUS、Lenovo、日本HPはすべて2つ。なお、外部記憶媒体にデータを記憶させる際有効なのがデータ転送の早いUSB3.0だが、東芝、ASUS、Lenovo、日本HPはUSB3.0を搭載しているものの、日本Acerは2種類ともUSB2.0ポートのみ。
ネットにつなげるときは、基本的に無線LAN。有線でネット接続をするときには、1月30日現在発売されているものの多くはUSBイーサネットアダプターを利用する。有線LANポートがあるのは東芝の「dynabook R631」と、2月に発売予定の日本HP「Folio13」だけだ。USBイーサネットアダプターを使うとUSBがひとつ潰れてしまううえ、重たいデータをやりとりするときなどは有線LANポートがあるほうが安心な筆者としては、大きなポイントである。
価格面でみてみると、現在発売されている13.3ワイド型のSSD搭載ウルトラブックでは、東芝「dynabook R631」が11万円~、レノボ「IdeaPad U300s」が13万6千円~、日本Acer「Aspire S3 S3-951-F74U」が10万円弱~(1月30日現在、いずれもネット上での最安価格)となっており、なかなか全てが1000ドル以下とはいかないようだ。そのなかで最も安いのはASUS 「ZENBOOK UX31/UX31E」で8万円~だが、2月に発売される日本HP「Folio13」は発表時価格で8万円を切る79,800円。世界でナンバーワンの出荷を誇るHPが スペック・価格ともに妥協を許さない“本命”として打ち出してきた格好だ。
ちなみに「Folio13」(日本HP)はキーボードを押し下げる落差が1.7mmと、1.5mmのものも多い他社に比べてやや高めのつくりとなっており、薄さを追求するためにキーボードが薄くなり過ぎた結果、打ちにくい…というストレスが少ないよう考慮されている。細かい部分だが、案外キーボードの好みというのはあるもので、使い勝手にストレスを感じたくない人は、考慮する価値があるかもしれない。
薄さ・軽さなどの特徴ばかりにとらわれず、そのために犠牲になっている部分に注意し、バランスの良いモデルを選ぶことが重要といえそうである。