かねてから日本の大学病院は「白い巨塔」と呼ばれ、患者よりも学会で発表することを優先している、と批判されてきた。大学病院における医療の問題点を、大前研一氏が指摘する。
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ハーバード大学やジョンズ・ホプキンス大学など海外にも大学が病院を経営している例はあるが、その場合は病院側が圧倒的に優位に立っている。日本のように大学側が優位に立つと、医学部生が専門を決める際に医局のパワー争いになり、人員が不足している科ではなく、ボスの力が強い科に人が集まる、ということが起きる。
かねてから大学病院は「白い巨塔」と呼ばれ、患者よりも学会で発表することを優先している、と批判されてきた。大学病院はインターンを薄給で雇えるため、どうしても経営が甘くなりがちである。
一方、患者は学会で治療や手術の事例を発表するためのモルモットにされる、というきらいがある。それがなければ医学の進歩はないという側面もあるが、そういうことは研究所の役割にして、大学は病院を経営せず、学生の教育に徹するべきではないか。患者の位置づけが不明確な日本の大学病院は、もはや無用の長物になったといわざるを得ないだろう。
※週刊ポスト2012年2月10日号