大寒波の到来とともに、インフルエンザが猛威をふるい始めた。1月16~22日の1週間で、全国のインフルエンザ患者数は前週の3倍に急増、推計111万人といわれる。
昨年は新型インフルエンザの流行が社会問題となったが、今年は患者の約90%が「A香港型」だという。しかし、安心は禁物で、せんぽ東京高輪病院の辻祐一郎医師がこんな警鐘を鳴らす。
「A香港型は5年ぶりの流行になります。この型は急に高熱が出て、重症化しやすい。脳症や肺炎を併発、死に至る危険性もあるので要注意です」
感染を防ぐうえで、最も効果があるといわれているのは、やはりワクチンの予防接種だ。ワクチンは、秋から冬、翌春にかけてどの型のインフルエンザが流行るかを予想して毎年春ごろに準備される。3種類の混合ワクチンになっており、今回はそのうちのひとつがA香港型に対応しているため、予想が的中した。
とはいえ、ワクチンも万全ではなく、その効果は70~90%といわれ、予防接種を受けても発症するケースはある。
さらに、ワクチンが効果を発揮するのは、接種から約2週間後。すでに流行しているいま接種しても意味がないと思いがちだが、前出の辻医師は、いまからでも予防接種をしたほうがいいと断言する。
「通常のインフルエンザの流行時期は12~3月です。今年は流行が1か月ほど遅れているため、終わる時期も1か月ほど遅い可能性があります。それに、もし感染したとしても、予防接種には重症化を防ぐ効果があるんです」
ワクチン以外の予防法として、一般的なのは、うがいや手洗い。それに加えて、最近注目されているのが、「口腔ケア」という方法だ。口腔ケアとは、簡単にいえば歯や口のなかの汚れを取り除くこと。
「歯垢、歯石、舌についた食べ物のカスなどからはプロテアーゼという酵素が発生します。このプロテアーゼは、体内でのインフルエンザウイルスの増殖を高める作用があります。それを防ぐうえで口腔ケア、つまり、うがい、歯磨き、舌磨きはとても有効だといえます」(とつかグリーン歯科医院・渡辺秀司院長)
ある介護福祉施設では、歯科衛生士が正しい口腔ケアの指導を週に1回実施したところ、していない入居者と比べ、インフルエンザ発症率が10分の1になったという報告もある。前出の渡辺院長は、家でいますぐできる予防法としてこの舌磨きをすすめる。ドラッグストアなどで売っている専用の舌ブラシを使わなくても、食後の歯磨きのついでにすればいいという。
「歯ブラシで数回、舌をまんべんなく軽くこすってあげます。奥から手前に力をいれすぎないように気をつけましょう。それだけで、かなり舌がきれいになります。歯磨き粉は、刺激物質がはいってるので使わない方がいいでしょう。歯ブラシをもう一本使ってもいいという人はブラシ部分をガーゼで包んだ自家用の舌ブラシを作るのもいいでしょう」(渡辺院長)
※女性セブン2012年2月16日号