1700万個のメガヒットとなったコンビニスイーツ、「口どけなめらか濃厚フロマージュ(セブン-イレブン)」には、意外な顧客がいた。作家で五感生活研究所の山下柚実氏が、その秘密をセブン-イレブン・ジャパン商品本部FF・デイリー部の飯野めぐみ氏に聞いた。
* * *
街角のサラリーマンが、私と同じようにフロマージュを食べつつ歩く姿に遭遇した。
「実はコンビニスイーツ購入者は男性が多いのです」(飯野氏)と聞いてまたびっくり。甘いものは女を呼び込む武器、と思っていたけれど、現実は違った。世間の流れは「スイーツ男子」に向かっていたのだ。
「以前に比べて男性がお酒を飲まなくなった分、甘いものを好む傾向が強まっているのでは。ただ、男性はケーキ店に入るのを恥ずかしがったり、1個だけでは買いにくかったりしますよね。
その点、コンビニは便利です。しかもハンディでおいしかったら、たくさんの男性がリピートしてくださるはず」(飯野氏)
開発担当者の飾らない木訥な口調と、家内制手工業のような作り方、そして「1700万個」という巨大な数字。3つのアンバランスに頭がクラクラした。
まさかマスプロダクションの最先端で徹底的な「素朴」が切り札とは。しかも、その勝負の矛先が女子ばかりか、むしろ「男子」に向けられていたとは。
消費社会の流れは絶えずして、しかも元の水にあらず。一つのコンビニスイーツから、思ってもみなかった世相が浮かび上がってきた。
※SAPIO2012年2月1・8日号