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芥川賞田中慎弥 母と店員以外の女で初めて話したのは編集者

『共喰い』で第146回芥川賞を受賞した田中慎弥さん(39)。その記者会見で見せた不機嫌な態度から、一部では「不機嫌メガネ男子」として萌えの対象にされているという。

そんな田中さんは、高校卒業後、自宅にこもり、ひたすら小説の原稿を書き続けた。バイトも一切せず、収入はゼロ。田中さんはテレビのインタビューで、当時の自分について問われ、

「勉強も嫌いだし働こうっていう気持ちもほとんどないし、できることといったら日本語の読み書きくらいですよね。だからそれをやるしかなかった」

と、本気とも冗談ともつかぬあの口調で語っていたが、作家デビューへの情熱を密かに燃やし続けていた。

毎朝8時に起き、机に向かう。日中はほとんど外出せず書き続け、就寝前に好きなお酒を飲み、翌朝また書き始める。

まるで修行僧のようなそうした苦節がついに実り、高校卒業から15年目の2005年、『冷たい水の羊』で新潮新人賞を受賞。母・眞理子さんは近所の人に「私が読んでもようわからんものを書いている」と嬉しそうに漏らしたという。書評家の大森望さんは新人賞受賞後の田中さんの様子についてこう明かす。

「授賞式で東京に呼ばれたのですが、田中さんは飛行機が大嫌いらしくて新幹線で5、6時間かけて初めて上京した。しかも会場までとても自力では到達できないということで、東京駅の新幹線ホームまで担当者が迎えにいったそうです」

また、こんなエピソードも。

「この時の担当は女性編集者でした。田中さんはこの編集者に『家に閉じこもっていて人と会わないので、お母さんとコンビニの店員以外で話をした女性はあなたが初めてです』といっていたとか(笑)」(大森さん)

その後も下関の実家にとどまり、執筆づけの日々を送った。行きつけの理髪店店主がこう話す。

「30年以上のお客さんですが、いまも昔も全然会話はありません。『いつもと同じでよいですか?』と私が聞いて、『そうですね』というくらい。作家さんとしてデビューされてからもそれは変わっていないですね」

伝わってくる印象は会見で見せた皮肉屋の一面より、朴訥な青年だ。

※女性セブン2012年2月16日号

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