韓流ブームで空前の盛り上がりを見せる新大久保。休日には3万人以上が押し寄せるが、その中心はオバフォー(Over40)の女性たち。韓流スターのグッズショップに押し寄せ、イケメンカフェでうっとり。そんな街の現状にとまどいを見せる人も存在する。
『オオクボ 都市の力』(学芸出版社刊)著者で、20年以上新大久保を研究してきた法政大学兼任講師の稲葉佳子さんは、“女性たちの聖地”へと変化した新大久保についてこう語る。
「オオクボ(新大久保)が特殊なのは、各地に昔からあるコリアンタウンと異なり、“いま”の韓国の発信拠点になっている点。“電車で行けるソウル”なんです。しかも、母と娘が楽しめる、健全な街になりましたからね(笑い)。ただ、わずか10年でここまで急激に変貌する街は、かなりレアなケース。しかも、韓国関係の店舗だけの特需という意味で、いわゆる地域活性化の流れとも違います」
まるでテーマパーク――“観光客のため”の街への変容にとまどう住人もいる。長年、新大久保で不動産業を営んできた男性はいう。
「テナントの賃料は、ここ数年で1割ほどの上昇ですが、特例は駅に近い物件。通常は坪3万円くらいなのですが、駅近は坪10万円で、月に約100万円の賃料のところも。メインの大久保通りであっても、ちょっと駅から遠くなるだけで、全然人が来ない。街の明暗がはっきり分かれてしまっています」
新大久保に15年暮らす女性(48才・会社員)もこう嘆く。「新進のチェーン店の勢いに押されて、昔からあった本当においしいごく普通の大衆食堂が減ってしまいました」
そしてまた、その跡地を埋めるように新しい韓流の店がオープンしているのだ。今年10年目を迎える韓国料理専門店『テーハンミング』は、K-POPアイドルが日本に来ると足繁く通う名店。店主のパク・ヒョンジャさんは、
「うちは食堂だから、味が第一。10年やってこられたのは、この味に対して信用があるからだと思います。でも、いまは新大久保の飲食イコール“イケメンの店”のようなイメージになってしまって(苦笑)。いつまでこのバブルが続くのか…本当の韓国の味が伝わってるか心配です」
※女性セブン2012年2月16日号