大河ドラマに乗じた町おこしは、毎年、全国各地で繰り広げられる光景だ。
今年の主役は「平清盛」。兵庫県の井戸敏三・知事が「画面が汚い」「瀬戸内海の海の色が出ていない」などと発言して物議を醸しているが、その兵庫県もドラマに連動する形で「あいたい兵庫キャンペーン」を展開し、観光客誘致に力を入れている。
中でも舞台として重要な場所が神戸市の福原町(兵庫区)だ。1180年、権勢を極めた清盛が整備、遷都した「福原京」が置かれた地である(福原町の由来は福原京ではないとの説もあるが、場所は同じ)。
「清盛を演じる松山ケンイチさんは女性人気が高い。清盛ゆかりの地として有名になって、異人館街やポートピアと一緒に訪れる女性客が増えると嬉しい」(商店街関係者)
ところが、そんな期待を困惑気味に受け止める地元の経営者がいる。
「大河ブームなんて1年限定。そのためにわれわれの商売がやりにくくなるのは納得いかない」
そう語るのは、福原にあるソープランドの店長だ。
「福原は戦前に“福原遊郭”と呼ばれた赤線地帯に由来し、滋賀の雄琴と肩を並べる関西随一のソープ街として発展してきた。特に近年では雄琴が衰退したため、県内だけでなく大阪や京都、さらには明石大橋を渡って四国からも客が来ます」(大阪の風俗ライター)
異変が起きたのは、大河の題材が発表された2010年の終わり頃からだという。前出の店長がこぼす。
「昨年4月頃になると、客引きが相次いで摘発されるようになりました。そして6月にはあるソープ店が売春防止法で摘発され、従業員だけでなく来店客も逮捕された。福原のソープが摘発されるのは17年ぶり。お客さんが逮捕されたショックは大きく、客足が一気に遠のいた。大河に合わせた摘発キャンペーンだと受け止めている」
その結果、6月以降に10店が廃業や経営者交代に追い込まれたという。
「パトカーが頻繁に巡回しているから“しばらくはやめとくよ”という常連さんもいる。高級店も軒並み値下げしているが、今度は女の子が“稼げない”といって他県に移っている状態。ここには70軒近くのソープがあったけど、来年は何軒残っているか……」(別のソープ店経営者)
※週刊ポスト2012年2月10日号