日本人にとって漢字は切っても切れない関係にあるが、漢字検定1級を保持し、クイズ番組の漢字問題で抜群の正答率を誇る女優の宮崎美子さんは、「難読漢字は人生の相棒」と語る。そんな宮崎が難読漢字をマスターする秘訣とは一体どのようなものなのだろうか? 宮崎さんは次のように話す。
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難読漢字って、「宝の山」なんですよね。でも、その山はあまりに高く、奥深い。まずは自分の興味から入るといいんじゃないでしょうか。
植物や漢方薬など、それぞれ得意分野はあるでしょうし、職業を通じての専門知識でもいいと思います。それが難読漢字と親しむための窓口となるはずです。
別に知らなくても生活には困らないけれど、知っていると楽しいものですよ。文字の奥に秘められた昔の人の思いや暮らしに想いを馳せると、自分の中の“世の中を見る扉”が少し開く気がします。
部首一つとっても意味がある。なぜこの漢字が生まれたのか、なぜこの形をしているのか、なぜこの物の名前に用いるのか。物ならば、どのようにそれを使うのか……。それらを探るのがもどかしくもあり、面白くもある。新鮮な驚きや発見との出会いが、難読漢字を読むことの醍醐味・喜びでしょうね。これぞ大人の特権であり、この楽しさが「覚える秘訣」でもあります。努力しただけ成果が実感できるのも、やりがいを感じます。
おじいちゃん、おばあちゃんと小学生のお孫さんが、難読漢字を通じて会話をするのもいいんじゃないでしょうか。意味を知ると、難読漢字はとてもよくできていてためになります。今では目にしなくなった物も含まれますから、昔の暮らしぶりを教えつつ「なんでこの漢字ができたんだろうね」なんて、推理したりして。きっと、盛り上がりますよ。
実は、私は漢検1級の勉強中には、その楽しさがわかりませんでした。ところが吉川英治さんの『三国志』を読んだら、1級レベルの漢字がゴロゴロ出てきたんです。「殲滅(せんめつ)」とかね。これは「ニラのごとくザクザク切り刻み、敵を皆殺しにする」こと。漢字から血なまぐささがリアルに迫ってきませんか。“ああ、こういう楽しみのために難読漢字はあるんだ”と、痛感しました。
試験対策では随分と試行錯誤しましたよ。ジェスチャー、語呂合わせなど、色んな覚え方を試しました。先ほどの「殲」は「韮」の字を含むので、「懺(ざん)」「薤(かい)」と分けて覚えたり、香辛料のカルダモンが脳を活性化すると聞けば、マイボトルを携帯したり。そういえば、カルダモンは漢字ではどう書くのかしら(笑い)?
私にとっては、老後にのんびり楽しみたい趣味の入り口かな。おかげで退屈しないで済みそう。良き“相棒”に巡り逢えたと思います。
※週刊ポスト2012年2月17日号