死者・行方不明者合わせて約2万人を数えた東日本大震災。失われた命の価値に差があるはずがないが、肩書きの有無で、「命の値段」が何倍も違うのだ。震災犠牲者遺族に払われる弔慰金は、民間サラリーマンの場合、災害弔慰金500万円に労働者災害補償保険法による300万円の計800万円に対して、公務員の場合は「遺族特別援護金」として、1860万円が加算されて計2660万円になる。
さらに市町村役場の職員には各自治体の職員共済から弔慰金が出る。防災無線で住民に避難を呼びかけるアナウンスを続けて津波に巻き込まれ、そのエピソードが道徳の教材に載ることが決まった南三陸町職員・遠藤未希さんの場合、宮城県市町村職員共済組合のHPによれば、「給料の1か月分×1.25」の弔慰金が支払われるという。
職種によっては「賞恤金(しょうじゅつきん)」がある。命の危険を伴う職種が対象で、その公務中に死亡した際に、功績を称えて支給される弔慰金だ。
宮城県警では、賞恤金の額は功績に応じて1360万~3000万円と規定している。
消防署員の場合も、公務災害による殉職者に対し、490万~3000万円の賞恤金が支給される。消防団員も対象となる。
ただし、賞恤金は「二重取りになるため、賞恤金の対象者は災害弔慰金の500万円を受け取らない慣例となっています」(厚労省災害救助・救援対策室)なのだという。
なお、警察官や消防隊員、自衛官などの殉職者は「二階級特進」が慣例とされ、大震災の殉職者も昇進した。この措置は殉職者への敬意という意味だけでなく、「死亡退職金や遺族年金の算定には、特進後の階級が適用される。そこには“弔慰金の割り増し”という目的がある」(警察庁OB)といわれている。
※週刊ポスト2012年2月17日号