日本が31年ぶりに貿易赤字に転落した。貿易赤字になると、どんな問題が生じるのか。東京新聞・中日新聞論説副主幹の長谷川幸洋氏が解説する。
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海外からの資金が入ってくるためには、日本が魅力的でなければならない。たとえば企業に成長力があるから株や社債を買いたい。国内市場が伸びそうだから市場参入したい。日本国債は安心だから、利回りが低くても買いたい。海外投資家がそう日本を評価するかどうか、である。
残念ながら現状を見る限り、とてもそうは言えない。日本電気(NEC)の1万人社員削減が報じられたように、企業の先行きが心配になりそうなニュースが目につく。すると財政赤字を賄うだけの資金が海外から日本に入ってくるためには、投資家に高利回りを保証する以外に手がなくなってしまう。つまり金利上昇である。
金利生活のような豊かな高齢者もいるだろうが、大半のサラリーマンは金利が上がると大変だ。景気はますます不景気になる一方、住宅ローンの借金はますます重くなる。
かつて米国は財政赤字と経常赤字の「双子の赤字」を抱えながらも、経済全体が成長していたので、なんとか乗り切れた。日本はどうかといえば、20年を超えるデフレ不況から脱していない。「長期不況に財政赤字と経常赤字」という組み合わせは最悪だ。
政府は「だから財政再建を」と強調する。だが増税で財政再建を目指せば、肝心の経済成長が失われてしまう。それでは元も子もない。「経常赤字が現実になる前に、まずデフレ脱却を」が正しいメッセージである。
※週刊ポスト2012年2月17日号