御手洗冨士夫会長兼最高経営責任者(76)が、3月29日付でキヤノンの社長に6年ぶりに復帰する。
表向きの理由は、就任丸6年となる現社長の内田恒二氏から「退任したいと強い意向があった」ため。
「先行き不透明な時には世代交代を急ぐよりもベテランの力を結集し、会社を健全に運営していくべきだ」
と76歳の“ベテラン”は復帰を決断したという。 もともと、内田氏は御手洗氏が選んだ後継者だったが、結果的に御手洗氏を乗り越えることができなかった。『月刊BOSS』主幹の関慎夫氏が語る。
「2007年12月期が売上高のピークで、その頃から比べると2割ほど落ちています。2007年には約4883億円あった純利益も2011年は2486億円まで減少しています。また、キヤノンはアジアよりもヨーロッパにおける収益が高く、欧州危機の影響をもろに受けた。そんな状況下で、御手洗氏は『やっぱり自分が指揮をとらなければダメだ』と思ったのかもしれません」
御手洗氏をよく知る経営学者の長田貴仁氏も彼の“やる気”を指摘する。
「1月30日の記者会見で田中稔三副社長は『人材育成のスピードが会社の成長速度に追いつかなかった』と述べています。御手洗氏を超えないまでも、彼に準ずる人材が育たなかったということです。
彼は1979年から16年間にわたってキヤノンUSA社長を務め、ボストンバッグ片手にひとりで北米市場を開拓した。彼のビジネス能力を超える人はおそらく出てこない。経団連会長時代よりも、社業に専念できる今のほうが別人のように生き生きしています」
※週刊ポスト2012年2月17日号