『メルマガNEWSポストセブン』では、ビートたけし、櫻井よしこ、森永卓郎、勝谷誠彦、吉田豪、山田美保子…、各界を代表する論客が毎号書き下ろしの時事批評を発信していく。
現在配信中の1号では、ジャーナリストの櫻井氏が朝鮮半島について言及。約5年前、国家基本問題研究所(国基研)という小さなシンクタンクを作った櫻井氏は、不安定な状態が続く朝鮮半島情勢について、「中国の北朝鮮及び朝鮮半島への介入を阻止せよ」と主張する。
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日本人を拉致し、その他多くの人々を拉致し、300万人ともいわれる自国民を餓死させた金正日後の北朝鮮情勢の展開を、私たちはただ見守っていてはならない、日本国としての意思を持って、積極的に、朝鮮半島の人々のためにも、日本のためにも、他のアジア諸国のためにも、最善の体制作りを働きかけていくことが大事だと考えたがゆえの「どうすべきか」である。朝鮮半島は日本にとって重要な地域である。受身であってはならないということでもある。
中国にとっても同様であろう。日本が、中国やロシアが朝鮮半島を支配するようなことになれば、日本の安全は脅かされると考えるように、中国も同じように考えていることだろう。中国をよくよく観察すれば、朝鮮半島問題がきっかけになって中国の王朝が滅びてきたという類の意識が見てとれる。日清戦争はそのひとつの事例だと彼らは考え、北朝鮮に中国の支配体制を確立しなければ、また同じような苦い歴史の転換に直面すると考えるのだ。
現実を見れば、中国共産党が必死に守ろうとしている彼らの体制は、決して国民を幸福にはしない、出来ないのである。年間十八万件から十九万件も発生する暴動がそのことを物語っている。チベット、ウイグル、モンゴルをはじめとする異民族問題を、彼らは凄まじい弾圧で辛うじて押さえ込もうとしている。
そんな不安定な国内情勢を前に、北朝鮮に韓国や米国や日本の影響が及ぶことは、中国内の民主化を求める勢力の拡張につながると恐れる。だからこそ彼らは北朝鮮への自由主義圏の影響を断じて排除しようとするだろう。
日本が対中国で持っている最強の武器は価値観である。自由と民主主義と法の順守を呼びかけ続け、世界に向けて強調し、中国が国際社会の眼前で朝鮮半島を蹂躙出来ないように、抑止することだ。
もうひとつ日本がすべきことは、韓国による自由統一を内外に提言し、そのために韓国を支えるのだ。2009年の米韓の合意は北朝鮮有事の際には韓国による自由統一を推進するという内容だった。日本はその合意への支持と賛同を明確にすればよい。
こうして初めて、朝鮮半島有事という歴史の大転換点で日本は韓国との長い歴史上の軋轢を乗り越え、真の友好国になっていけるであろう。また、中国も牽制していけると思う。