もはや不眠症は国民病だが、生活習慣次第で改善は可能だという。睡眠は1セット90分。「90分の倍数の時間眠ると、すっきり目覚めることができます」(スリープクリニック調布・遠藤拓郎院長)
人並み外れて精力的に仕事をしている人の中には「睡眠時間は1日3時間」と豪語する人も多く、かのナポレオンも「1日2、3時間しか寝なかった」と伝えられている。では、90分×2=3時間の睡眠で本当に十分なのだろうか。
「結論から言うとノー」と、遠藤氏は話す。
1965年、アメリカのフロリダ大学の教授が行なった実験で、1日3時間以下の睡眠を何日も続けると、視覚関連の作業でかなりミスが増えてしまうことが明らかになった。一方、1993年、チューリッヒ大学の研究室が行なった実験では、1日4時間の睡眠を4日間続けると、成長ホルモンを分泌させる「ノンレム睡眠」は維持されるものの、心のメンテナンスに必要な「レム睡眠」がやや減ってしまうことが明らかになった。だが、その不足分は1日だけ通常の長さの睡眠を取れば回復できる、と結論付けられている。
こうした研究データを根拠に遠藤氏が考案したのが、「月曜から金曜は4時間半の睡眠で乗り切る」「土曜、日曜のどちらかで7時間半の睡眠を取り、日頃の不足分を回復する」「土曜、日曜のもう片方をパフォーマンスに支障のない6時間の睡眠にする」というものだ。
「ポイントは、いずれの睡眠時間も90分の倍数であることです。4時間半睡眠と聞くと短いように感じるかもしれませんが、熟睡すれば問題はありません」
やみくもに長時間眠ればいい、というわけではないのである。
※週刊ポスト2012年2月17日号