山手線に新駅を建設する計画が動き出した。新駅が計画されているのは品川駅から北側約1キロにある車両基地「田町車両センター」跡地だ。このエリアを国際的なビジネス街に再開発するための重要なポイントは何か。大前研一氏が解説する。
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JR東日本が山手線の品川―田町駅間で新駅の建設を計画している。同線の新駅は1971年の西日暮里駅以来、約40年ぶりで、30番目の駅となる。
新駅が計画されているのは品川駅から北側約1キロにある車両基地「田町車両センター」跡地(約15ヘクタール)で、早ければ2013年度にも着工する予定だという。
「山手線の内側では最後」といわれる大規模再開発エリアの品川駅・田町駅周辺地域は、昨年12月に国から「国際戦略総合特区」の1つ(アジアヘッドクォーター特区)に指定された。欧米の多国籍企業やアジアの成長企業の事業統括部門、研究開発部門を誘致することを目指して、ビジネス環境、外国人の生活環境、都市インフラの整備が計画されている。
このエリアを国際的なビジネス街に再開発するための重要なポイントは、平日の昼間しか人のいない「丸の内」にしてはいけない、ということだ。
外資系企業の場合、母国との時差により、日本企業と違う時間帯が活動時間になることが多い。また、クリエーター系やIT系の人たちは、夜間や週末・休日も関係なしに働く就業時間の不規則なケースが少なくない。したがって日本の「9時から5時までサラリーマン」だけを相手にしている丸の内のような街ではなく、24時間、常に人や会社が動いている街にしなければならないのだ。
四六時中、人が集まる状況を作るために必要なコンセプトは「人が住む」ことである。新宿新都心、品川駅東口、横浜みなとみらいなどは、ほとんど人が住んでいない。だから、丸の内と同じく夜や週末が寂しくて寒々しい街になっている。
一方、世界で繁栄している街は、都心部に人が住んでいて温もりがある。たとえば、ニューヨークのマンハッタンは、セントラルパーク周辺などの地価が最も高いエリアにも、オフィスや商業施設だけでなくマンションがたくさんある。
ニューヨークのエグゼクティブはマンハッタンの中に住宅を持ち、周辺の緑豊かなエリアにウィークエンドハウスを構えている。だからマンハッタンは、いつも街に人がいて活気があり、地下鉄も24時間動いている。
日本も、産業優先で都心部にオフィスビル、海際に工場や倉庫を造って人々を郊外に追いやる工業国モデルから脱し、今回の品川駅・田町駅周辺地域のように便利なエリアでキャパシティの6~7割を住宅にして、東京を「職住接近都市」に変えなければならない。
間違っても品川駅東口のような無機質なオフィス街にしてはいけない。外国人は満員電車による長時間通勤に拒否反応を示すので、これは非常に重要な要素になる。逆にいえば、そうしない限り東京にグローバル企業の集積地はできないのである。
※週刊ポスト2012年2月17日号