昨年3月に始まった高嶋政伸(46才)と、妻・美元(32才)との泥沼離婚裁判。政伸が「お互いの性格の不一致」「考え方(生活観、仕事観)の相違」として婚姻関係の継続が不可能だと主張したのに対し、美元が真っ向から反論。政伸の愛情が綴られた手紙や、酒に酔って暴力をふるわれたときの音声データなどを証拠として提出した。
そして昨年11月の公判からは新たな展開を見せている。政伸と美元、それぞれの担当医が意見書を提出したのだ。夫妻の知人は語る。
「政伸さんの主治医によれば、幼いころ母親を亡くしたトラウマで美元さんはもともと精神的に不安定で、そのせいで政伸さんが不眠になったというんです。別居後のいまは快復しているものの、婚姻生活を続けると病気になるので、離婚が望ましいということですね。でも政伸さんの不眠は結婚前からのこと。それで美元さんの担当医が、確かに彼女が政伸さんに対して感情的な振る舞いがあったことを認めた上で、それは政伸さんの“不安障害”の症状により美元さんが反応した一過性のものだと反論したそうなんです」
この“診断書の応酬”で、政伸の「不安障害」が争点のひとつとなっているようだが、それはどういったものなのだろうか? 新潟青陵大学大学院臨床心理学研究科の碓井真史教授がこう説明する。
「不安を伴う精神的な疾患のことをいい、それにより、発汗、不眠、動悸などの症状が出てくる。患者さんがどんなときに、どの程度不安を感じるかで、身体的症状は変わってきます」
政伸の場合は、「眠れなくなったらどうしよう」との思いから充分な睡眠時間を確保すべく、枕元に予備のアイマスクと耳栓を各30個ずつ置いていた。また「仕事がうまくいかなかったら…」との不安を打ち消すために、まじないの意味を込め、大量の砂や水を部屋に持ち込んでいた。日本不安障害学会理事で心理学が専門の広島大学大学院総合科学研究科・岩永誠教授が語る。
「不安障害のきっかけは遺伝的な要因のほか、強いストレスなど環境による要因もあり、それが配偶者である場合もあります。不安障害は非常に強い思い込みや激しい心身の症状があるため、治療には長い時間を要することもあります」
実は離婚裁判で「不安障害」という言葉が飛び出すことは珍しいことではないという。弁護士の太田宏美さんがいう。
「暴力や浮気などの明確な離婚原因がないとき、不安障害など精神疾患の診断書を提出することはよくあるんです。例えば性格の不一致の場合。医師の診断書が出ることで被害が明らかになり、婚姻関係が著しく困難という、きちんとした離婚原因になります」
※女性セブン2012年2月23日号