年間約30億円にものぼる外務省の機密費。元外務官僚で、話題の新刊『国家の「罪と罰」』(小学館)の著者である佐藤優氏が、外務省が説明する、機密費の領収書を一切公表しない理由を一刀両断する。
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情報提供者から提供された領収書を公表しない理由について、〈相手は名前が出ない前提で協力しており、出れば今後の協力は一切期待できない。金額だけ明らかにしても(別の相手と)比較され、不満が出て信頼関係が崩れる可能性がある〉という説明も合理性を欠く。
領収書を公開することで、情報提供者Aに月10万円支払っているが、情報提供者Bには月20万円支払っていることが露見すると、Aが不満を持って「よくも俺を軽く見たな。それならば今後は情報を提供しない」とか、あるいは腹いせに「機密費をもらったとバラしてやる」とか言って暴れることを想定しているのであろう。馬鹿馬鹿しくて話にならない。
領収書が公開されるか否かにかかわらず、こういう情報提供者はいつでもカネを理由に協力を拒否する可能性があるということだ。インテリジェンスの現場で、実際にエージェント(情報提供者)を運営したことがある人ならば、誰でもわかることであるが、重要な情報源をカネで獲得することはできない。カネを目的とする者は、より多く支払う機関にすぐになびくからだ。内閣がこのような認識を本当にもっているとするならば、インテリジェンスの基本がなっていないと言わざるを得ない。
※『国家の「罪と罰」』より抜粋