誰にも気兼ねすることなく熱唱したい――。そんなカラオケファンの根強いニーズを実現した店舗が人気だ。それにしても、ひとりで歌いたい人がこんなにたくさんいたなんて!
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総務庁の「カラオケボックスの実態調査分析概要」によれば、1996年に、約16万680店あったカラオケボックスは、2010年には約12万8900店にまで減少していた。新たなニーズはないのか? と、業界が模索する中、日本一の店舗数を誇る「カラオケ本舗まねきねこ」を手がけるコシダカが、東京神田にひとり用カラオケ『ワンカラ』を出店した。
店内にはピットと呼ばれるひとり専用BOXが24室。連日満室が続き、順番待ちの人で賑わいを見せ、4時間待ちという人もいるほどの人気ぶりだ。
ひとり用カラオケのいったいどこが楽しいのか――と、記者も実際に足を運んでみた。平日の昼間だというのに満室。およそ30分で順番が回ってきて、ピットへ。室内はほぼ正方形。面積は畳一畳分、つまり0.5坪。2~3人は入れそうなくらい十分な広さだ。
マシンで曲を選びマイクの前に立ち、モニターに歌詞が現われるのはこれまでのカラオケと同じだが、決定的に違うのは室内で音がしないこと。『ワンカラ』はヘッドホンをして歌うシステムなのだ。
「全体の店舗数が減少しているにもかかわらず、カラオケ業界は新たなサービスや提案もない手詰まり状態でした。そんな業界に一石を投じたかった」
語るのは、『ワンカラ』の開発に携わった同社事業本部長・吉田利幸氏。この開発は、5年前、同社・腰高博社長が役員会議で「ひとり用のカラオケボックスを始めよう」との一言から始まった。
利用者は男女とも20~30歳代の若者層の利用が目立つ。利用者が歌った曲の履歴には、あるアーチストのアルバム1枚分だったり、ひとりのアーチストの曲をずっと歌い続ける人だったり……。
「狙い通りです。歌をじっくり歌いたいというニーズを掘り起こせました。私たちが自分の意識を変えれば、周囲も、行動も、そして結果、人生も変えることができる。我々にとって、意識革命に等しい」
吉田氏の言葉は躍動的だった。
●取材・構成/中沢雄二
※週刊ポスト2012年2月17日号